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桃子を先頭に、四人は校舎の隅にある、体育準備室へと向かった。職員室から少し離れたそこは、全校生徒から『鬼が島』と呼ばれ、恐れられていた。
勇ましく廊下を歩いていた桃子だったが、何かに気付いて思わず竹刀を背中に隠した。
「やあ、桃ちゃん。どうしたの、勇ましいカッコで」
声を掛けて来たのは、同じクラスで幼馴染みの安倍だった。すぐ横に、彼女の池端が寄り添っている。
「あっ安倍クン。ううん、何でもないの。ちょっと鬼が島にね」
普段は聞いた事もないような可愛らしい桃子の声音に、供の三人が勢大に舌打ちをする。
「そうか、ついに直接対決か。無理するなよ」
「ありがとう。がんばる!」
「俺の『モノポリー』奪還も頼む」
「まかせて!」
「あ、これ、うちの親戚から貰ったお菓子。これで力をつけてくれ」
そう言って安倍がくれたのは、岡山土産の「きびだんご」だった。
「あ、うん。ありがとう」
安倍と池端は、そのまま階段を登って去って行った。
しばらく彼らの消えた階段を呆けたように見つめていた桃子だったが、頬を紅潮させてクルリと振り返った。
「やっぱりカッコいいよね、安倍クンって。んーっ、何だか更に元気が出て来ちゃった。みんな、行こう!」
ハイな桃子に反して、お供三人のテンションはだだ下がりであった。
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