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「来ないで!」
そう叫んだら、夫はドアを開けなかった。
「泣いたら落ち着くから。今は一人にして。」
しばらくして、夫がリビングに戻って行くのが分かった。
いっそ、このまま荷物をまとめて、園子の家にお世話になろうかな。
そんな事を考えていたら、いつの間にか眠っていた。
どのくらい経っただろう。
ふと目が覚めると、私の肩には毛布が掛けられていて、側には夫が座っていた。
「落ち着いた?」
変わらない夫の笑顔。
私はうんとは、返事できなかった。
「俺、くららとは別れないから。」
夫の顔が見れない。
それは、ただ単に結婚にしがみついているように見えるからだ。
「その代り、彼女とは別れた。」
「えっ?」
「愛しているよ、くらら。」
夫は私をそっと抱きしめた。
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