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昨日の一件から、美砂の机には常に見張りがいる。梢の机は盲点になっている。
ちらちらと梢の方を伺うような、美砂の表情には憔悴が見える。初めて見る表情に、これからの期待が高まる。
昼を過ぎて、梢は引き出しに手紙を見付けた。梢はそれを誰かに見られる前に、素早く鞄へと仕舞った。警戒するのは当然だ。
今回の手紙に剃刀は仕込んでいない。その必要はない。ただ、
「隣人様へ
あなたのしたことは許せません。
手紙ではなく、直接、目的を教えてください。
白川美砂より」
と記してある。
放課後に梢は美砂に耳打ちをした。
その場面は誰もが見ていたが、他の者に真意は想像もつかないだろう。
今、硝子細工たちは、裸のまま擦り合わされ、歪な不協和音を響かせている。
鈍く、耳障りで、不快感に普通なら手を止める所業だ。
だが、この、壊してしまいそうな音こそ、脳髄の芯に染み入る、求めていたものだ。
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