慈しみ深き愛 15

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慈しみ深き愛 15

 丈によって高められた躰は、一度熱を放った位では全然収まらなかった。  あぁ……もうっ! なんでだよ。俺ってこんなに節操ない男だったか。でも丈が欲しくて欲しくてもう我慢できない。 「……もう、ちゃんと抱いてくれ」 「ふっ……やっと言えたな」  丈は満足そうに微笑んで、俺の着ていたジャケットもセーターもズボンも、全部器用に脱がしていった。あっという間に綺麗に裸に剥かれ……恥ずかしくて、もぞもぞと布団の中に躰を潜らせてしまった。新しい布団カバーは上質なリネン生地で清潔でさらっと、それでいて温もりのある生地で心地良かった。 「いつも思うが……」 「なんだ?」 「丈はさ……随分と手際がいいよな」 「そうか……それは職業柄かな、いつもやっているしな」 「えっ!」  慌てて白衣姿の丈が患者さんを診察している所を想像したが、そこには洋服を全部脱がすシーンなんてないじゃないか。全くいい加減なことを!   「それは関係ないだろっ! そんなことしてないくせに」 「ははっ洋の服を何度脱がしたことか、数えきれない程、私は洋を抱いたよな」 「またそんな言い方を。丈はやっぱ変態だ……」  それにしても、この部屋が俺が育った場所だってことを一瞬忘れていた。というか、忘れてしまう程、丈にもっていかれていた。  改めて冷静に部屋を見渡して、感心してしまった。  本当に……跡形もなく消し去ってくれたんだな。    俺には出来なかったことを、お前がする。  それでいいと思った。  義父と過ごしたあの嫌な暗い思い出の前の、両親と過ごした頃の懐かしい思い出を捨てきれずに、いつまでもそのままにしていた俺の心を覆すような改装工事な訳だが……不思議ともう未練はなかった。  むしろ、すっきりした。  両親と過ごした時代の良き思い出は、俺の心にちゃんと残っている。  もう既に物体として残った部分は、義父との日々に浸食されてしまっていたのだ。つまり……見えるモノに俺は執着しすぎていたんだ。だからいつまでも結局そのモノに染みついたあの日々が忘れられず、蓋をしても、何かの拍子にポンっと飛び出して俺を苦しめていたのだ。  ならば……きっかけになるようなモノは、いっそ消し去ってしまえばいい。 「洋、こんな勝手をして、怒っていないか」 「いや……ありがとう。俺がずっと躊躇していたことを、丈がしてくれた」 「そう言ってもらえると……ほっとするよ」 「怖くないか」 「怖くはない。何度も言うが……今の俺には丈がいるから」 「そうか。にしても今日は随分ガードが固いな。こんなにすっぽり布団を被って……どれ?」  丈が潜り込んだ布団の上から、俺の躰のラインにそって撫でて来た。さっきから……その布越しっていうのやめろよ。じれったさが募っていく。 「丈こそ、今日は焦らしすぎだ!」 「分かった。じゃあ本領を発揮せねばな」  その言葉が合図かのように布団を突然ガバっと捲られたかと思うと、次の瞬間には丈の舌が俺の両胸の突起を交互に攻めて来た。自分で弄っても気持ち良くなんてないのに、丈の舌先で嬲られるように転がされると、ジンジンしてくるんだ。痛いほどに。    そこは下半身と直結しているようで、一度精を放った性器も、疼く後孔も、丈をどんどん求め出す! 「気持ち良さそうだな」 「いっ言うなよ!もうっ」  そこからは、いつもの丈になった。  いや……いつも以上に求められた気がする。  片足を肩にかけられ、激しく打ち付けられ……四つん這いにさせられては、後ろからも激しく上下に突かれた。 「くっ……はっ……あぁ……っつ」  一カ月我慢したのは丈も同じだ。  俺達は、少しの間離れていた分、お互いを理解しようと努力した。  相手のことを、相手の立場を思いやることの大切さ。  自分とは違う相手を、自分のことのように愛おしいと労わる気持ち。  伝われ!  「洋、抱きたくて抱きたくて……我慢していたぞ」  最後は仰向けにさせられ、抱きしめられるように優しく抱かれた。  激しくも優しくも、押しては引く波のように、丈は俺の躰を万遍なく味わってくれた。俺も躰の奥深い場所にやってくる丈の熱を受け止め、求め続けた。  濡れて……濡れて……  こんなにドロドロになるまで抱かれるなんて。  ここで。俺の部屋で…… 「はぁ……もうキツイっ……もう嫌だ……これじゃ電車に乗れなくなる」  最後はもう……泣き言のようなことを言ってしまう始末だった。  
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