新春特別番外編 雪の毛布 5

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新春特別番外編 雪の毛布 5

「僕の今日の大切なおやつをお供えしますから、どうか菅野くんと早く会えますように。南無阿弥陀仏……」  流さんが作ってくれた菅野くんの雪像にあんこもちをお供えして、手を合わせました。  雪の上に豪快に手と足を広げて眠る菅野くん。  抱きつきたくなる衝動を堪えるのに必死ですよ。  触れたら駄目です。  壊れたら願掛けの意味がなくなります。 「あのね、何してるの?」 「あ、静留くん……でしたよね」 「うん! あのね、あの人は……だあれ?」  静留くんが菅野くんの雪像を指さして、不思議そうなお顔をしました。 「かんのくんですよ。僕の大切な菅野くんです」 「かんのくん、かっこいい!」 「おぉ、なんと有り難き幸せです。南無」 「なむ?」 「そうです。南無南無です」 「なむ~ ラララ、なむ~」  静留くんがよく透き通る可愛い声で突然歌い出したので、楽しい気分になってきました。静留くんは、細い指先を細かく優雅に動かして鍵盤を叩くような仕草をしています。 「上手ですね、あ……もしかしてピアノも弾けるんですか」 「うん! ひきたいなぁ」 「ありますよ! ありますとも! お寺にもピアノが! 住職さまに頼んで弾かせてもらいましょう」 「じゃあ、こもりんくんの好きな曲をつくって……あげる」 「おぉ、では『あんこ行進曲』がいいです」 「あんこ? あんこって、あまいの?」 「そうですよー おいしいんですよ」  そんな会話をふわふわしていたら、住職さまが呼びに来てくれました。 「静留くん、小森くん、おやつだよ~ 今日は特別に雪見饅頭だよ」 「わぁい! 月下庵茶屋の雪の日限定品ですよ。静留くん行きましょう」 「うん!」    僕はいつの間にか静留くんと意気投合していました。  友だちみたい。  友だちと呼んでもいいのかな?  懐かしい響きを口ずさんでみました。  おやつの後は、静留くんがピアノを弾いてくれましたよ。  おやつに食べたばかりの雪見饅頭をイメージした曲を即興で作ってくれたのです。  僕は涎が垂れて……どうにも止まりません。  「汚いなぁ……」    流さんが隣に控えて、ぽとりとコタツに落ちる度に雑巾で拭いてくれます。 「なんて、なんて……美味しそうな曲なんでしょう! あぁ菅野くんにも聞いてもらいたいです」  目を閉じると、まるで涅槃の境地です。  炬燵に足を入れて……こっくりこっくりしていると、誰かが僕の隣にグイグイと入ってきましたよ。 「どなたでしょう?」 「あぁ寒かった。風太~ 暖めてくれよ」  その声に目がぱっちり覚めました! 「か、菅野くん!」 「あけましておめでとう。風太! やっと来られたよ。連絡も出来ず悪かったな。実家が神社の近くで、正月はごった返すから、年末からずっと泊まり込んで手伝っていたんだ」  菅野くん! 菅野くん! 菅野くんですよ! 「風太に『かんの家の饅頭』をたっぷり持って来たぞ」 「かんのくーん!」    僕は嬉しくて嬉しくて、抱きついてしまいました。  泣いてしまうくらい嬉しいのです。 「わぁ、かんのくん、本物……カッコいい」 「静留、ちょっとサービスし過ぎ!」 「だって……もう、こもりんくんとお友達だもん!」 「そ、そうか……静留の大切な友だちか」 「駄目……かな?」 「いや、月影寺の一員なら安心だ。小森くん、静留と友だちになってくれるかな?」  東弥くんの言葉に、僕は胸がいっぱいです。 「は、はい! 僕でよければ……静留くんのお友達にさせてください」 「あんこ、どーめい? だね? あんこ好きになちゃった!」 「ほ、本当ですか」 「うん! あとね、友だちも……すき」 「わぁぁ~」  そんな僕らの様子を、菅野くんが目を細めて見つめてくれています。  なんだか、ぽっかぽっかな新年ですよ。  今年もよろしくお願いしますね! 「風太、良かったな。俺も大好きだ! 今年もよろしくな!」  炬燵の中で、手をギュッと握ってもらえましたよ! あとがき **** 沈丁花さんの静留くんと東弥くんをお借りしました。 小森風太と静留くんは仲良くなれそうだねというおしゃべりから始まった クロスオーバーでした。 クロスオーバーはここまでで、明日のラストは流と翠に濃厚に甘くしめてもらいます。そろそろ新春企画も終わりです💕番外編にも関わらず、スターやスタンプ、ペコメで沢山応援していただけて嬉しかったです。  
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