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新春特別番外編 おまけ 丈&洋
『雪の毛布』 丈&洋バージョンをおまけで置きますね!
***
「丈、今日は遅かったな」
「あぁ悪かった。夕食はもう食べたか」
「……まだ」
まったく洋を一人で置くと、相変わらずこれだ。
冷蔵庫を覗くが、あいにく夕食になりそうなものは入っていなかった。まぁ母屋の庫裡に行けば、何かしら食べ物があるだろう。
「母屋に食べに行けば良かったのに」
「日中、翠さんに来客だったようで忙しそうだったから」
「……そうか、今度は私たちも友人を招こう」
「それって……瑞樹くんのこと?」
「そうだ」
「いいね! あの坊やも雪を見たいだろうし、宗吾さんは子供みたいに寺庭でソリをするかもな」
洋が明るい表情を浮かべたので、そのまま話を続けた。
「ははは、そういえば、さっき中庭にいい感じに雪が盛り上がった場所があったぞ」
「そんな場所あったか」
「あぁ、あそこで芽生くんがソリをしたら楽しいかもな。掘り起してかまくらを作るのも楽しそうだ。そうだ、母屋に行きがてら見てみるか」
「あぁ」
洋にコートを着せて、白いマフラーをぐるぐるに巻いてやった。
「母屋に行くだけなのに、重装備だな」
「風邪を引いたら困るからな」
「ふっ、いつも……俺を大事にしてくれてありがとう」
「どうした? 素直だな」
「べっ、別に」
恥ずかしそうな洋の横顔に、また見惚れる。
色白の顔が朱に染まる瞬間は、いつ見ても美しい。
一歩出ると、まるで雪国に来たような気分になった。
「あそこだ」
「あそこにはシートに覆われた何かがあったが」
「何があった?」
「流さんに聞いたら工事中だと」
「ふむ、じゃあそこに雪が積もったんだな」
「……なだらかな曲線がいいな」
「あぁ、まるで洋の身体のラインみたいだ」
「丈は全く……」
洋が苦笑する。だが満更でもないようだ。
庫裡を覗くと、流兄さんからの伝言メモがあった。
……
おふたりさん、やっと来たな。おでんを作ったから持ってけよ。今宵は雪見酒なんて、どうだ? だが、くれぐれも邪魔すんなよ!
……
鍋一杯のおでんと『翠』という日本酒が机に置いてあった。
「雪見酒か、さては兄さんたちも、今頃一杯やっているのか。確かあそこの茶室には雪見障子もあったし、今から押しかけてみるか」
「丈、無粋だぞ! 俺たちの寝室からも……雪ならよく見えるだろ」
「そうか、今日は雪見障子気分で、雪と洋を同時に愛でられるのか」
「お、おでんが先だ」
「洋の好きな牛すじもたっぷり入っているぞ」
「本当か」
「食事を終えたら、すぐに抱きたい」
「……瑞樹くんに連絡してからだ」
「分かった。洋の仰せのままに……」
「はっ、聞き分けがいいな」
洋が嬉しそうに笑ってくれる。
それが私の生き甲斐だ。
今年も洋を暖めてやろう。
白い雪が積もる庭は寒いのに暖かく、まるで雪の毛布のようだった。
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