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どのくらいの時間が経ったのか。最初に月島が目覚めた。
「イテテ……。あれ? み、み、みんなぁ!
し、死んじゃったの? やめてェーーっ!
俺だけ、俺だけ置いて逝かないで!」
このグループはイケメン一ノ瀬、女子2人聖と如月、のんびり毛利、ビビり月島、お調子者の成瀬、そしてリーダー宗方の7人。
ビビリ月島の大きな声で6人は気がつき目を開けた。
「わーー、生きてたみんなぁ!」
全員の意識が戻ると顔を見合わせ、お互い大きなケガもなく起き上がることが出来た。
あれだけの雷が落ちたわりには不思議と樹木も建物も被害はなく、火事にもならなかった。
一ノ瀬が洋館のドアに近づき試しにドアノブを回してみるが当然開くはずはない。
「あー残念。どこかの裏側にでもスペアキーがあったりしないかな」
辺りを探しながら先頭を切って歩くとチャリンと鍵の落ちる音がした。
「え? 見た? いまの」
6人の目の前で一ノ瀬の姿が消え、代わりに鍵が落ちた。一瞬一ノ瀬がキツネかタヌキだったのかと思うくらい、あっさりと姿を変えた。
宗方はそれを拾うとマジマジと見つめ、もしかしたらと洋館の鍵穴にあててみた。
ガチャ。
その様子をみんなで見届け、顔を見合わせる。
「開いた……」
一ノ瀬の不思議なシーンを見てしまった6人は言葉を失う。しかし解錠し、役目を終えた一ノ瀬はスルッと元の体に戻った。
「い、一ノ瀬ッ。今のはなに?」
「知らないって! 急に体がむずがゆくなって、勝手に鍵になったんだよッ」
「体は何ともないの?」
「大丈夫」
「あんたが鍵があったらーなんて言うからよ」
賢い聖が冷静に状況を分析した。
「とりあえず中に入ろうぜ」
重たい扉を開け、様子を窺いながらゆっくりと中を覗いてみた。無人の家に入るなど初めてのこと。先頭にいた成瀬はおそるおそる一歩を踏み出した。
見上げると上は吹き抜けになっていて、館内は奥深い暗闇と化している。天井にはシャンデリアがうっすらと見えた。
物音もしない館内は永遠に続くブラックホールのように吸い込まれそうな不気味ささえ感じる。
ドアが開いても電気が通っていなければ、と思った成瀬はもう少しだけ中に入り、スイッチを探す。
「みんなもちょっとは探せよ。電気つくかもしれないし」
すると一番後ろにいた毛利もドアを大きく開け広げたまま、中に入った。
「あ、あれかな?」
毛利の手がそこに届く寸前、音もなくドアがバタンと閉まり、7人は暗闇に閉じ込められた。
「ど、どしたーー!」
「やだ、開けて開けてーーッ!」
「毛利、何やってんだよ。早く開けろよ!」
「や、闇だーッ、呪いだぁーッ!」
パニックになった7人の声が広い館内に響き渡る。
「ごめん。確かスイッチがそこに」
暗闇の中、毛利の指先にスイッチが触れるとパッと家中の電気がつき明るくなった。
「あ、ついた!」
みんなはお互いの顔を確認しホッとしたのも束の間。1人足りなくね?
「え?」
「あれ?」
「1、2、3、4……少なくね? 毛利は?」
「どうせトイレでも行ったんじゃねーの?」
「あっれ? もしかして一人ずついなくなるっていう映画、実話とか?」
「やぁだー、やめてよ成瀬」
「なにお前怖いの?」
不安そうな女子に成瀬は強がってケラケラと笑ってみせた。
キョロキョロと見渡し毛利を探していると、如月があるものを見つけた。
「キャーーッ! て、天井に!」
その声にみんなが頭上をみると、そこにはシャンデリアから顔を出す毛利がいた。
「うわーーッ! 出たーー! 顔だけェ!」
「こ、この館の呪いだぁーーッ!」
成瀬とビビリ月島の恐怖と不安のボルテージは最高潮に達した。
「みんなごめん、驚かせて。僕ね、何でか知らないけどスイッチに触れたあたりでここに瞬間移動したんだ。今はこの家の電気を全て任されてる感じで身体が温かくて。
多分、役目が終われば元に戻るんじゃないかな、一ノ瀬みたいに」
毛利はシャンデリアから顔だけ覗かせて、身体はシャンデリアの一部となっている、異様な姿だった。
「さっきから何? 要望をいっちゃダメなの?」
「毛利、からだ痛くない?」
心配そうに聖が呼びかける。
「大丈夫。でもパワーみたいの伝わってくる。
邪悪な感じはしない」
「何か私たち、変な世界へ迷い込んだ?」
「うん。自分たちの姿かたちが変わるなんてね」
ここは自分たちを迎え入れているのか。
それとも引きずり込んでいるのかーー。
玄関ロビーの壁にかかる肖像画が一部始終を見据えていた。
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