泊まる覚悟

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「いいよ。トイレ行くとき夜中も電気はいるだろうし。ごめん、上にいるよ」 「あぁ助かるよ」  そしてみんなはもの珍しそうに見渡しながら階段をあがっていく。女子2人が一番手前の部屋を選び、ドキドキしながらドアノブを回す。  すると中は10畳くらいはあろうか、広い部屋にベッドと本棚があった。 「見て見て、古い本がたくさんあるよ」 「ホントだ。ふっる!」 聖は本棚から1冊の本を取り出した。 著者、桐島総一郎。 〝桐島壱番館に代々伝わる書〟 「何だろう、これ」 本を開いてみると、この家で過去に起きたという奇怪な現象が書いてあった。 「如月ちゃん、これ! 私たちが体験してることと似てる」 「え? ホントに?」 〝山の神と雷の神とが激しくぶつかり合ったとき、彷徨う旅人はこの地に引き寄せられる。 山小屋に入る旅人に異変あり。地の神が怒りを鎮め……〟 「こっからは字が薄くて読めない……」 「ここってさ、いわくつきの場所なんじゃ?」  そう認識した2人は急に寒気がした。 「毛利ーー、この部屋の電気消さないでくれる?」 天井に向かって問いかけると〝わかった。つけとくよ〟と、どこからともなく聞こえた。  そんな毛利の声は、もはや他のメンバーにとっても心の支えとなっていた。  毛利はその夜シャンデリアに顔を残したまま自らの手や足で各部屋に電気を供給し、館内に明るさを届けた。 そして一抹の不安を残しつつ、夜は更けていく。    太陽のわずかばかりの薄明がこの洋館を照らし始める。一夜(ひとよ)限りの夢物語。  秋風のような涼しい空気が流れ、落ち葉と絡まり寝ている7人の頬を撫でた。 時刻は7時をさす頃、宗方が目を覚ました。 「あれ?」  身体を起こすと、建っていたはずの洋館は消え、一ノ瀬たちは部屋で寝ていたままに2人ずつ寄り添っている。  宗方は自分の目を疑った。記憶を辿り、ここで過ごした経緯を見つめ直せば直すほど擦り合わない現実がここにある。  時刻は7時になり、まるで魔法が解けたかのように6人は一斉に目を覚ました。陽の光を浴び眩しそうに薄眼をあけるその表情は一変し、しばしこの状況を把握することが出来なかった。
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