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鳥のさえずりが聞こえてくる。スズメだろうか。鳥に関しては無知に等しいので分からないけれど、きれいな声色をしているな。
そのさえずりと共鳴するように、スマホのアラームがやかましいくらいに鳴る。自分で設定した音量とはいえ、いくらなんでも大きすぎるだろ。
「ん~・・・」
目を開けるのが面倒で、手探りでスマホを探す。あーうるせー、マジどこだよ俺のスマホ。
ようやく見つけたと思ったら、今度はシーツの感覚がなくなった。
「痛っ!」
まさかベッドから落ちるとは・・・。でもおかげで目が覚めた気がする。
今度はしっかり目を開けてアラームを止める。やっぱりもうちょっとだけ音量抑えようかな、なんて考えながらボーっとしていると、下から母さんの声がした。
「結月ー、早く降りてきなさーい」
はいはい、わっかりやしたー。こちとらフローリングの床に後頭部ぶつけて目が覚めたってのに、そこに追い打ちを掛けないでくれよ。余計に頭が痛くなるわ。
俺、安室結月の目覚めはだいたいこうだ。アラームを止めようとしてベッドからずり落ちて後頭部を床に打ち、そのおかげで目が覚める。こんなんじゃあ脳細胞が傷つきまくりだな。もうちょっと目覚め方を変えてみるか。って、そんなの今はどうでも良いんだよ。
一階に下りてから、まずは洗面台で顔を洗う。冷たい水は寝ぼけた俺を程よく起こしてくれるので、いつも水を使う。五月の半ば、もう暦上では初夏の頃だ。だから余計に丁度いい。
顔を洗ってからリビングへ行くと、仕事へ行く服に着替えた母さんが既に家を出る準備をしていた。
「母さん先に出るから、戸締りお願いね」
「あいよー」
まだ眠いんだよという感じを前面に押し出して返事をする。本当はもうすっかり目が覚めているのだけれど、朝っていうのは面倒なもので、どうもアニメの方が原作に追いつきそうでアニメの展開をやたら遅くするいわゆる尺稼ぎ手法を取っていた某人気アニメみたいに、目覚めの瞬間を延長したくなってしまうのだ。それほど寝足りないのか、あるいは学校なんて行きたくないという幼い反抗の表れか。どっちだっていい。いずれにしろ、今日はどうしても行かざるを得ないのだから。
母さんが家を出て行ってから、俺はテレビのニュースを見ながらのんびりと朝食を摂った。今の時刻は六時半。どう考えても土曜日に起きる時間帯じゃない。俺だって好きでこの時間に起きているわけじゃないんだ。何も予定がない日はいつまでも寝ていたい日だってあるし、いっそ寝たまま一日が過ぎてくれないかなとも思ったことだってある。
だけど、高校生に限らず学生である以上、世間一般的な休日に学校に来るよう言われるのは仕方のないことだと思う。
俺は部活には入っていない。中学の頃はバスケ部に入っていたけれど、高校は帰宅部だ。そもそも運動が得意な方じゃない。やれることといえばせいぜい勉強くらい。じゃあなんでバスケ部に入ったんだって聞かれたら、自分でも分からない。
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