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満月前夜
満月の前夜。
月は眩しく輝き、星はほとんど見えない。しかし、最後の一部が欠けていた。
「明日だね。僕も楽しみだよ。頑張って。」
「うん。頑張る。」
それから少し俯きながら叶子が打ち明ける。
「実はね。あたし、2週間前の中央高校の文化祭見に行っていたの。それで風太の真剣な演技を見て。感動して。あたしもこんな風にやれたらなーと思って。だからここまで準備が出来て、明日発表できるのが嬉しいの。ほんとに今までありがとう。」
少し驚いた様子で風太が返す。
「見に来てくれてたんだ。僕も力になれて嬉しいよ。こちらこそありがとう。叶子。」
風太はこれまでの2週間、それからそれまでの1か月を思い返した。仲間との忙しい日々。協力しあった喜び。そして、叶子とも協力できたこと。短い時間だがたくさん話せたこと。何だか心が満たされた。
ボーーーー ボボーーーー
今日も汽笛は鳴る。叶子と風太が出会った時よりも満ち満ちた月を頭上に輝かせながら。
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