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第一話 謝罪
仁へ
関わりを避けてしまって申し訳ない。
体調が悪いと言い続けていたが、実はずいぶん前に完治していたんだ。
おまえはとてもまっすぐな人で、いつも煮え切らない態度の俺と親しくしてくれた。
今も変わらず仁のことは親友だと思っているが、ボロを出さないうちに先手を打つことにした。
おまえは俺のことを出来がいいなんて言ってくれたが、そんなことはないんだ。
仁みたいに周りに影響力を与えられるヤツが羨ましかった。
今までありがとう。
捉えどころのないヤツだとは思っていたが、彰彦からの手紙を読んで直立不動になった。
「まじか・・・」
認めたくはなかったがヤツに執着していたのはたしかだ。
「なんか悪い知らせ?」
平和ボケした顔をしたルームメイトの圭太は床に寝転がりながら聞いてきた。
虚無感に襲われながら、これって俺とは決別するって意味?と圭太に手紙を投げつけた。
「心当たりとかねーの?」
手紙なんて今どき珍しいなと呟きながら、圭太は彰彦からの手紙に目を通して俺に返してくる。
「・・・。よくわかんねえ」
「でもその人、仁と同じ大学じゃん。ドロップアウトするわけ?」
そんなことはないと言い返した後に、それほど俺はあいつに煙たがられていたのかと不安な気持ちになった。
言葉を失っている俺に、圭太はまあとりあえずその人に連絡してみればと提案してきた。
「持ってないんだ、携帯・・・」
圭太は目を丸くすると合点が入った顔をして、だからソレねと俺の手に握られている手紙を顎で示した。
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