クラスメイトは離婚するっていうんだ

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数日後学校から帰ると、玄関にとうさんの車が停めてある。 僕は家に駆けこんだ。 とうさんがいる、というだけで何もかも上手くゆく気がした。 「とうさん!おかえりなさい!」 ・・・でもとうさん・・すごく疲れた顔をしている・・。 「颯太。大事な話がある。颯太の部屋にいっていいか?」 僕はどきんと胸が痛くなったが(うなず)いた。 とうさんは僕の部屋に入ると、ベッドに座った。 「颯太。しばらく山のおばあちゃんのところに行ってくれないか。」 え? 山のおばあちゃんは、僕をいつも可愛がってくれている、かあさんのお母さんだ。 近くに大きな森があったので、僕は「山のおばあちゃん」と呼んでいた。 僕が生まれる前におじいちゃんは亡くなっていて、ずっと独り暮らしだ。 毎年夏になると、山のおばあちゃんとその森に虫取りに行った。 この三年ほど行っていなかったけれど・・。 「今度の夏休み?」 とうさんは首を振った。 「いや、今度の日曜日に送ってゆく。」 送ってゆくって・・僕とかあさんだけ? それに日曜日って明後日(あさって)じゃないか。 それって僕の意見を聞くって事じゃないんだ・・。 もう決めてしまったの? 「なんで・・?」 色々考えは渦巻(うずま)いていたけれど、ようやくそう聞いた。 とうさんの目が泳いだ。 これはとうさんが、僕に言い訳をする時の目だ・・。 「颯太。お前ももう道理の解る年だ。 とうさんとかあさんは、大事な大人の話をしなくちゃならない。」 「待って!」 僕は叫んだ。 「僕ひとりで山のおばあちゃんのところにゆくの?」 とうさんは頷いた。 「いやだよ!そんなの。学校もあるし。」 「学校には話してある。颯太はあちらの新しい学校に行くんだ。心配ない。」 なにが・・何が心配ないだ。 なんて勝手なんだ。道理がわからないのはとうさんの方じゃないか! 言いたいことは、何も言葉にならなかった。 そのかわり涙がぽろぽろと(こぼ)れた。 しゃくりあげながら、ようやく言えたのは 「いつまでなの?」という一言だった。 とうさんは僕の肩に手を置いて、ただ黙って僕を見つめていた。 「きちんと話が着いたら、迎えに行くよ。」 そして黙って僕の部屋を出て行こうとした。 とうさんが部屋を出る前に僕はつぶやいた。 「とうさん・・かあさんと離婚・・するの?」 とうさんは一瞬立ち止まって僕を見つめた。 何か言いたげに口を開いたが、そのまま何も言わず部屋の扉を閉めた。 しばらくして玄関を開ける音がして、とうさんの車が出て行く音がした。 とうさんはぼくとかあさんを捨てるんだ・・。
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