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日曜日、とうさんは僕の荷物を降ろし、
山のおばあちゃんによろしくお願いしますと深く頭を下げた。
ばあちゃんが心配しなくていいからね、と答えると
ちょっと泣き笑いのような顔をして、そのまま家にも上がらず
車に乗り込んで帰ってしまった。
朝早く家を出る時に、車が見えなくなるまでかあさんは手を振っていた。
寡黙なとうさんと、小鳥の囀りみたいによく喋るかあさん。
僕はずっと二人は仲良しだと思っていた。
森の向こうを回って見えなくなるとうさんの車を見送りながら
僕はふいに抑えていた涙が溢れた。
「泣かんでもええよ。颯太。」
ばあちゃんはぎゅうっと僕の手を握りながら言った。
「すべて上手く、ちゃんと治まるからね。
それまでばあちゃんと仲良く暮らしてゆこうな?」
十歳にもなって泣くなんて、ちょっと恥ずかしくなったが
僕は大きく頷いて、家の中に入った。
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