新しい生活は辛かった

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翌朝、僕はばあちゃんと一緒に新しい学校に行った。 学校までは裏の森をぐるりと回って、歩いたら四十分はかかる。 ばあちゃんはその間に、 かあさんが子供の頃も同じようにここを通ったんだよとか 小さい頃はお転婆(てんば)で・・と 聞いたこともない話をいっぱいしてくれた。 明日からは独りで行こうと、僕は道を覚えるだけで懸命だったけど。 やっと着いた学校は、古い校舎の学校で、 二宮金次郎の銅像まである。 前に見た怖い学校の映画を思い出して、僕はため息を()いた。 ばあちゃんは職員室で担任の川上先生に挨拶をした。 川上先生は笑うと片方の頬にえくぼが出来る、若い女の先生だ。 ばあちゃんを見送ると、川上先生に(にぎ)やかな教室に連れて行かれた。 「おはようございまーす!」 先生が教室に入ると、後ろに付いてきた僕を見て、 教室にいた皆がわっと声を上げた。 僕は恥ずかしさで、顔が赤くなるのを感じた。 川上先生が大きく黒板に僕の名前を書いた。 「今日から新しいお友達です。加藤颯太くん。仲良くしてくださいね。」 三十人ほどの好奇心いっぱいの目が僕を見つめる。 「東京から来ました、加藤颯太です。よろしくお願いします。」 ぱちぱちと手を叩く音に交じって おおー、トウキョウ(べん)だーっ!!どこかから冷やかすような声がした。 皆がどっと笑う。 先生に空いている席に座るように言われて向かうと、同じ声がまた聞こえた。 東京もんはアイドルみたいな顔しちょるのぉ! 僕は席に座ると(うつむ)いた。 こんなところで僕はこれから過ごしてゆかなくちゃいけないのか・・。 僕はぎゅっと手を握りしめた。 隣りの机の三つ編みの女の子が、少し机を寄せて話しかけてきた。 「私、山上風花(やまがみふうか)。よろしくね?今のうるさいのが、草野大樹(くさのだいき)って言うの。 頭悪いだけで悪気はないから許してね?」 「だれが頭悪いんじゃ!聞こえとるぞ、風花!」 またみんながどっと笑った。
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