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寂しそうに返事をした勇太だったが、その日からお父さんとの勉強が始まった。
お父さんが紙に大きくゆっくり『あ』と書いて見せる。
「これが『あ』、書いてごらん」
お父さんの書いた『あ』を見ながら。勇太は何度も何度も真似をして『あ』を書く。
「うん。いいね。次は『い』だよ」
お父さんは一文字ずつ教えていき、何日もかけて全部のひらがなを勇太に教えて。
「『い』と『り』がわかんないよ……」
「『た』と『な』に似てるよぉ」
「『る』と『ろ』なんか嫌いだ!」
「『お』と『を』って何が違うの!?」
勇太はさんざん文句を言ったが、お父さんとの勉強はやめなかった。
お父さんは一生懸命な勇太にそっとたずねてみた。
「もう寂しくない?」
「寂しいもん!でもサスケに手紙書くんだもん!」
必死にひらがなを覚えていく勇太。その勇太のためにお父さんは、ある日、封筒と便箋を買ってきた。
「勇太はもう手紙かけるよ。サスケに伝えたいことを書こうね」
「……うん」
勇太は小さく返事をしたが、鉛筆を持って便箋に向かったが、何も書けない。
「サスケはなんて言われたいかな?」
「お父さんは、勇太ほどサスケのことは分からないから。勇太はなんて言いたいの?」
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