03.ピーチティー

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その日、彼女は僕の席にオーダーしたドリンクと軽食を運んできたのだ。 番号が描かれた小さな旗を目印に。 確か果実が丸ごと入った、ピーチティーだったはずだ。 ベトナムはコーヒーが有名だが、僕には甘すぎる。 元々、コーヒーよりも紅茶派だ。 ただのフレーバーティーやジャム入りではなく、果実が丸ごと入っているのがベトナム流だ。 彼女は僕のテーブルに注文品を並べてくれた。 つい僕は、ここが異国であることを忘れ、 「ありがとう」 と日本語でお礼を述べてしまった。 「ドーイターシマシテ」 カタコトの返事が返って来てハッと気づいた。 「ニホンノカタデスカ?」 「イ、yes. I'm Japanese.」 このおかしな会話が、2人の初めての会話だった。
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