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北口前の大通りを、ひたすらまっすぐ進んで、10分ほど経った。
「……暇だ」
北口は、南口に比べて閑散としていた。
駅前にコンビニが1軒、大通りに飲食店が数軒ある他は、アパートや一軒家が建ち並んでいるだけだ。人通りもほとんど無く、寂しい印象を受けた。
これで夜まで暇つぶしは、正直辛い。ただでさえ今は1月で寒いってのに。
先へ進む気力が一気になくなる。ふと右を向くと、細い道の向こうに、住宅に囲まれている公園を見つけた。俺はそこで少し休むことにした。
地面が砂でできているその公園は、5、6人で鬼ごっこができそうなくらいの広さがあったが、隅にブランコと滑り台、鉄棒がある他は遊具らしきものは無かった。
俺は公園に足を踏み入れ、入り口のすぐ脇にあった木製のベンチに腰かける。
ため息が、こぼれた。
「俺、何やってんだろ」
勉強勉強とうるさく言われ、いい加減しつこかったから、逆にさぼってやろうと始めた生活。
でも、得られるものは何も無い。ゲーセンだって、最初は楽しかったけど、今はこのざまだ。
「手に入れたものはひよこだけ、ってか」
ポケットの中に手を入れ、マスコットの紐部分をつまんで取り出す。
その時、隣から強い視線を感じた。
――隣に人なんていたか?
視線が来る方へ顔を向ける。
「……何だよ」
全然気付かなかった。
肩にかかるさらさらの黒髪。ビー玉みたいに丸い、くりっとした目。寒さからかほんのり赤くなっている、柔らかそうな頬。
そこには、見るからに小学校低学年か中学年くらいの少女がいた。
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