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表情が曇る少女を見かねて、麒麟はアドバイスを与えた。
「私は数に含みませんが、この寺におる者も数に加えて構いません。
ここから流れ出る水には、純粋で貴重な浄化パワーがたくさん含まれています。
それを小さい頃、いや母親のお腹にいるときから与えられたものは、自然と力を備えている者が多いのです。だから、この里に在住する者に目を向けて探せば、そんなに難しいことではないですよ。
見事に探し出し、この池の前に集わせることがあなたへの課題です」
「そんな、、、
小さい頃からここで育った者ならまだしも、私は今この地に来たばかり・・・
難易度はぐ―んと膨らんでいるような気が・・・」
少女にとってはその課題のイメージが全くつかず、何から始めればいいのかさっぱりわからなかった。
しかしぼんやりしていてはいつまでも彼のもとに帰れない。
そう感じた葉羽は、とにかく前に進めるように手探りで質問する。
「麒麟様、ひとつだけ教えてください・・・
その方が真の力の持ち主だと、どのように判別すればいいのですか?」
「いい質問です!
それはね、手を握るのです。
そして貴女の想いをその手に込めたとき、もし有力者であれば手のひらに印が現れるはずです」
「しるし?」
少女は自分の手のひらをじっと見つめてみた。
もちろんそこには何も現れていなかった。
「では、試してみますか?
太賀、貴方の手を貸してあげなさい」
麒麟に指示されると、太賀は右手を差し出した。
少女は彼の大きな手を自分の両手で包み込み、『あなたは浄化力の持ち主ですか』と心の中で尋ねてみる。
しかし何度手を握ってもそこに印らしきものは見えなかった・・・。
「う、う、ゴホン!」
太賀は無理な咳払いをして少女に合図した。自分は違うのだと・・・。
それに気づくと、葉羽は恥ずかしくなりその手をパッと外した。
「あ、ごめんなさい!」
「では、次は私の手を握ってみますか?」
次は麒麟も手を差し出した。
彼女の手は見るからに白く綺麗な指をしており、触れると一瞬で吸い込まれそうだった。
そしてまだ何も聞いていないのに、彼女の手に触れた瞬間、そこには龍のような絵が現れた。
「あ!もしかして、これですか?」
「そうです。これが浄化の刻印。これを持つものを9人集めなさい。
そして貴女の願いが叶った時、ここでの修業は終わりです」
「願い??」
「そう、課題を見事クリアした時、あなたの願いがひとつだけ叶えられるのです。
それがこの修業の報酬・・・」
「報酬?」
願いが一つ叶う、、、しかもなんでも、、、それはまさにこの課題の難易度を示していると思った。
しかし少女にとって報酬なんて必要ない。
この力を磨き、自信を持ち、そして少しでも早く紗倉の元に帰ること、それが彼女にとって重要視されることだった。
「麒麟様!
私は、自分の力を磨きコントロールできるようにとここへ参りました。
この課題をクリアした時、それはできるようになるのでしょうか?
当初の目的が果たせないのならば、ただ彼を待たせてしまうだけではないかと不安で・・・」
麒麟様は泣きそうな少女の肩に優しく手を置き、その顔を覗き込んだ。
「貴女の力は今、ゴツゴツした原石のようなもの。
勢いのままに形を創ろうと無理にぶつければ、貴女のほうが割れてしまいます。
だから少しずつ削って角のない丸い形にする必要があるのです。
ほら、この龍が抱えている丸い球のように・・・」
麒麟は池の中央で透き通る水晶を抱えた龍の彫り物を指さして言った。
「貴女がこれから探す彼らは、その役目を担ってくれるでしょう。
真の浄化力をもつ者同士、触れあっていくことで角が削られていくのです。
限りなく究極な丸に近づくことができれば、貴女の力は完成といえる、、、
つまり、葉羽の言う、力を磨きコントロールすることが十分にできるようになるということです」
彼女の言葉で少女はやっと状況を理解した。
ここに来た限り、この課題にチャレンジするのは必須だということ・・・
楽な修行などない、こんなことで躊躇っているようでは、最初から修業したいなんて口にしてはいけないのだと・・・
自分は紗倉と約束をした。彼に苦しい決断を仰ぎながらも、自分の意志を貫いた。それならば強くならなければ、国へは帰れない・・・
そう、決意を新たにした。
「わかりました・・・。
ここに9人集めてみせます。それが私の自信になると信じたいから・・・
そして今よりもっともっと強い人になれるように頑張ります!」
麒麟は決意に満ちた彼女の強い瞳を見つめ、これからどんなことを見せてくれるのだろうと胸を高鳴らせた・・・。
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