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4話 寺の外 × 狐につままれた少女 × すれ違う想い
それからまた数日たったある日、少女は初那と町まで買い物に行くことになった。
「ねぇ、初那。私、本屋さんに行ってきてもいい?」
「もちろん!本屋はね、あの通りの確か5件目にあったと思う・・・。
私はこっちの雑貨屋に入るけど、ひとりで大丈夫?」
「うん、じゃあ、用が終わったら私もそっちへ行くね」
葉羽は馴れない町を歩きだす・・・。
そして古びた本屋に入った。
この力のことをもっと知るために、ヒントとなる本を探したかったのだ。
「浄化、、、浄化、、、ええーっと浄化の本、、、、、あった!!!」
本を探しながら薄暗い奥の方へと進んでいく。
やっと見つけたその本は、自分の背よりだいぶ高い位置にあった。
少女は思いっきり手を伸ばすとどうにか届きそうだったので、力の限り背伸びをし、やっと触れた本を引っ張りだす。
ボテッ
「いったぁ-い!!」
頭の上から急に分厚い本が落ち、少女の頭を直撃した。
「・・・僕の彼女を取らないでって」
ふと気が付くと、傍に背の高い男の人が立っていた。
葉羽は自分の頭を押さえながら、その人を見上げる。
その男は落ちた本の埃をパタパタ払いながら、葉羽に手渡した。
「え?さっきのはどういう意味ですか?」
「よく見てみて。それは君が探してた本??」
葉羽は首をかしげながら、手渡された本に目を移す。
「あ、違います!私が取りたかったのはその隣の本です!」
その男は彼女が求める本にひょいと手を伸ばすと、難なく取ってくれた。
「これ?」
「はい!ありがとうございます!!!」
「これね、今君が手にしてるその本の恋人なんだって。
君が突然彼女を奪いに来たから、攻撃したらしいよ・・・」
葉羽はその男の摩訶不思議な話に驚き、二つの本を交互に見る。
すると男は、後で手にした本の裏表紙をめくった。
「ほらね、『私の愛する彼に贈ります』って書いてあるでしょ?」
葉羽はまさかと思い、自分が手にしていた本の裏表紙もめくってみた。
するとそこには『愛しい君へ』と記されていた。
それに気づくと、目をパチクリさせながらその男の顔をみる。
「この2冊の本はね、ある恋人同士がお互いの想いを綴って交換したものじゃないかな?
最初から幸せだったのではなくて、喧嘩したりすれ違ったり辛い思いもしながらやっと結ばれたって感じがする。
だからもう離れないように、ずっとこうして並べてあったんだ・・・。
もしこの本が欲しいなら、手に取る前に聞いたらいいんだよ。
『この本の力が必要です。借りてもいいですか』って」
葉羽は彼が話すロマンチックな話にグイグイ心を掴まれた・・・。
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