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そして彼の話を聞き、一番に紗倉のことを想った。
もしこの修業を無事に終えて彼に再開した時、むやみに引き裂かれるなんて嫌だと・・・
少女は静かに目を閉じると、その本を胸に抱いてメッセージを呟いた。
「私はあなたたちを引き離したりなんかしません!
こんな大事な気持ちを教えてくれてありがとうございます・・・」
男は彼女の呟きをきくと不思議そうな顔をした。
「でも、これは君にとって必要な本だったんじゃないの?」
「はい、でもいいんです。
奪うなんて、引き離されるなんて、私なら一番辛いから・・・」
少女の寂し気な表情を見ると、その男は急に彼女の手を取る。そして彼女が必要としていた本の上に手を置くと、そっと自分の手を被せた。
「ほら、何が知りたかったか言ってごらん。僕が導いてあげるから・・・」
「え?あ、そのう、私は今、真の浄化力の持ち主を探しているのですが、、、、
なにをヒントに動けばいいのか分からなくて、、、、教えてもらえたら嬉しいな、、、と」
その男は軽く目を閉じる。そして被せた手から温かさ帯びると、そっと離した。
「はい。この本を一か所だけ開いてみて。そこに答えがあるから・・・」
少女が半信半疑のままその本を開こうとすると、触れる前に自然とそのページが捲れた。
そしてそこにはメッセージが一言だけ書いてあった。
『純真のように美しく光るモノを扱う人こそ、真の力の持ち主です』
少女は、目を見開き、その男をもう一度見る。
「そうなんだって。伝わった?」
少女が深く頷いたのを確認すると、男は再び二冊の本を本棚へ戻す。
葉羽は今、夢の世界にでも舞い込んだかのように、一部始終が信じられなかった。
どうしてそんなことができるのかと、その男に聞いてみようとしたとき、本屋の入り口から初那の声がした。
「葉羽!探してる本はあった??」
「あ、私いかなきゃ!」
その男に礼を言おうとすると、すでに男の姿はなかった。
葉羽は狐にでもつままれたのかと、渋い顔をして何度も首をかしげる。
「何?本屋で痴漢にでも遭った?」
初那は浮かない顔をしている彼女を心配する。
「ううん、すごく素敵な人と出会ったのだけど、お礼も言えずに居なくなっちゃった・・・」
「そうなの?
あのね、、、ここだけの話、この本屋ね、狐のお化けがいるらしいよ!」
急に表現する初那の怖い顔とひそひそ話に少女の背筋はゾクッとする。
「えぇぇぇえ!そうなの?
確かに、さっきの人、目が細かったかも・・・」
「うわっ!やっぱりそうよ!ふわふわの尻尾が生えてなかった?」
「う―――ん、それはなかったかな・・・
でも全然怖くなくて、すごく親切なお化けだったよ」
「フフフ、また会えるんじゃない?」
2人はその後もキャアキャア言いながら、街を散策し乙女の休息を楽しんだ。
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