4話 寺の外 × 狐につままれた少女 × すれ違う想い

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「あ、これね、葉羽にプレゼント!さっきの雑貨屋で見つけたのよ」 初那が手にしていたのは二つの小さな人形だった。 葉羽に手渡されたほうは花を持ったにっこり笑う女の子。 そしてもう一つを見せながら、初那が説明する。 「私が持ってるのは、葉羽なの。 ほら、名前の通り背中に羽が生えてるでしょ? そしてそっちは私のつもり。寂しくなったり迷った時には話しかけてね」 「こんなに可愛いプレゼントをもらっちゃって、本当にいいの?」 「もちろん!乙女の友情ね!」 葉羽はその人形の笑顔に癒され、嬉しくて顔がほころんだ。 気づけば夕暮れに差し掛かり、二人は町から寺に向かって歩き出した。 「あぁ、私はどんな素敵な王子様と出会えるんだろう・・・」 初那はその道中、幾多にも妄想を繰り広げ、夢の世界を語りだす。 「初那って面白い。夢の世界を描くのが上手ね」 「だって、夢を見るのも願うもの自由よ。お金だってかからないし・・・。 ほら、葉羽もやってみなさいよ! 目を開けたときにはきっと、素敵な王子様が現れるから!」 初那に促されるままに、立ち止まって目を閉じてみる。 (王子様、、、王子様に会いたい、、、) すると目の奥で微笑む紗倉のキレイな顔が浮かんだ。 彼はいつ見ても素敵で、思い出すだけで幸せな気持ちになれた。 少女はしばし心を潤わせると、ゆっくり目を開けた。 するとちょうど一人の男とすれ違った。 その男はとてもキレイな顔立ちで背が高く、誰もが一度は振り返るような魅力的な男だった。 「葉羽?」 知らないはずの人に自分の名前を呼ばれた気がして振り返ると、その男は立ち止まり驚いた顔をしていた。 「ねぇ、葉羽だよね!僕のこと覚えてない?遥斗(はると)だよ!」 葉羽はその名前を聞くと、ソレイユの仲間の顔を思い出す。 しかし国にはそんな名前の人はいなかった・・・ そのためだいぶ昔の記憶まで遡った・・・。 「はると・・・え?もしかして道場の遥斗先輩ですか?」 「そう!ガキの頃、一緒に道場で鍛えた遥斗だよ!」 少女の記憶がかすかにたどり着いたのは、田舎の古寺にいる頃、数年間通っていた道場の先輩だった。 「え?葉羽、本当に王子様に会えたの?」 初那は自分が言い出したことで一体何が起こったのかと不思議な顔をする。 「先輩がどうしてここに?」 「君こそ、どうしてここにいるんだよ!」 「私は今、麒麟様の御寺に修業に来てるんです」 「麒麟さんの?もしかして、葉羽は浄化の力を持っているの?」 「えぇ、どうやらそうみたいで・・・。 でも全然力加減ができなくて、コントロールつけるためにお世話になり始めたんです・・・」 「そっかぁ、新人って君のことだったのかぁ・・・」 遥斗は淡く懐かしい昔のことを思い出しているのか、優しい表情をしていた。 初那は何事かと、二人をキョロキョロと交互に見つめる・・・。
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