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それから3人は寺までの道中、横に並んで帰る。
「お2人とも遥斗先輩のこと御存知だったんですか?」
「存じるも何も、あいつも一時ここで修業してたからな」
広呂と遥斗はこの寺の同期生だった。
しかし彼は町にあるこども道場の講師となったため、早くにこの寺を出たのだ。
「え?遥斗先輩が?彼も同じ力を持っているのですか?」
「まぁな。だから時々寺に顔を出してる。
なんせ麒麟さんのお気に入りだからな」
「確かに、、、麒麟様のところによく来てますよね、、、2人って親密な関係とか?」
恋愛話が大好きな初那が目を輝かせる。
「知らん!俺に聞くな」
「きっとそうですって!
だってぇ、遥斗さんって綺麗なお顔に爽やかな笑顔、全体ににじみ出る優しさに鍛え上げられたあの肉体、、、、
その上、熊でもコロッとしちゃうくらいのあの色気が備われば、、、、あぁ、女性なら誰もが憧れるわ!」
初那が彼の顔を思い起こしながら、うっとりする。
「おい、熊って・・・。
それより、あいつがさっき、手紙がどうとか言ってたけど、葉羽ちゃん思い出さないの?」
「う、、、ん。覚えてないです。きっと彼の勘違いだと思いますが・・・。
だって私、いつもからかわれてばかりだったんです!
お前は強くなるな、俺の後ろに居ろ、他の男にヘラヘラするなとか俺に無断で出歩くな、、とまで・・・。
必死に強くなろうって頑張ってるのに挑発することばかり言われて、実はすごく苦手でした・・・
だから先輩も私のこと、嫌いだと思いますよ」
少女はあの頃のことを思い出し、なんとなく嫌な気分がよみがえる。
その話を聞いた二人はあんぐりしていた。
「それって・・・・大好きってことじゃない?」
「ははは、この娘、痛いくらいの天然らしいな・・・。
2人を極力会わせるなよ、初那」
「らじゃ!」
2人はひそひそと耳打ちしあう。
「でも不思議ですねぇ、普段会えない人にこんなところで再開できるなんて。
これもきっと狐さんの仕業かしら??フフ」
何も気づいていない少女は、きっともう遥斗に会うことはないのだろうと勝手に安心しきっていた・・・。
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