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それならばこれだけは確認しておかねばと、少女は意を決する行動に出た。
「麒麟様、失礼だとは重々承知の上で、ひとつだけ、確認してもいいですか・・・?」
葉羽はギュッと目をつぶり、首をかしげる麒麟の胸に両手を押しあてる。
「ひやぁぁぁ!!何?何???」
それに驚いたのは、緋色の方だった。
「あれ?柔らかい胸がある・・・。」
葉羽はその姿勢のまま固まり、ゆっくり彼女の顔を確認した。
「あははは、私は女よ!心配しないで!」
「はぁぁぁ、よかったぁ。
紗倉からは女性だと聞いてたのに、この衣装はどちらとも取れますから・・・
確認しておかないと、また緋色さんの時みたいに立ち直れなくなると思って・・・
本当に失礼なことをしてごめんなさい・・・。」
「ははん、緋色。彼女に何かしましたね?
悪戯まで私の真似をしなくともよいのに」
緋色は師匠の手前、気まずそうな顔をする。
「葉羽、私はどんな時も貴女の味方よ。
貴女を導き、支え、そして鍛えていきます。
どんなことがあろうとも、私を信じてついてきなさい」
葉羽は女神様にでも触れているかのように、彼女と接して安らかで清らかな優しい感情に満たされた・・・。
それから少女は太賀に連れられ、寺院内を一通り案内してもらうと、最後に広い講堂へたどり着いた。
「葉羽様、ここには今現在、6名の弟子がおります。あなたはその7人目。
貴女より年上の3名は修業がひと段落し、寺の中でそれぞれ好きなことをされています。そのうちお目にかかることもあるでしょう。
同年の3名は現在厳しい修業中であり、これから顔会わせることも多いと思いますので、紹介しておきましょう・・・」
その講堂には2人の男と先ほど会った初那が並んで座っていた。
「一人は先ほどご挨拶した初那です。
そして、あちらの背の低いのが、壱悟。隣のひょろ長いのが、仁胡」
「そんなに細くないけど・・・」
「へへへ、こいつね、ニコって名前なのに、全然ニコニコしてねぇの!」
太賀の紹介で、壱悟は無邪気な明るい笑顔を見せてくれた。
「私は、ちょっと遠いところから来ました、葉羽です。
よろしくお願いします!」
二人を前に律義にも深々と礼をすると、壱悟はフラリと近づき軽く肩を叩いた。
「俺たちタメなんだろ?敬語もなし、名前も呼び捨て!」
修業は相当厳しいんだし、気楽に仲良く行こうぜ!」
そのフランクな話し方に少女はやっと肩の力が抜けた気がした。
それと同時に、なんか聞き覚えのあるそのセリフを思い出すと、ふと大輝の顔がよぎる。
「あ、あ――――!!!」
急に声をあげた少女に、何事かと皆が目を丸くする。
そう、大輝を思い出した瞬間、隣に立っていた太賀が、体格は違うものの彼とそっくりなのだと気づいたのだ。
「太賀さん、もしかしてソレイユにいる大輝君と親戚ではないですか?!」
「ゴホン!
さて、壱悟、仁胡、今日の修業が終わったのなら、彼女をこの周辺の散策にでも連れて行ってあげなさい。せっかくだから初那も一緒に・・・」
太賀は、突然浴びせられた質問に無理な咳ばらいをしてごまかし、話を逸らした・・・。
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