1話 神聖な場所 × 修業に出た少女 × 新しく繋がる仲間

4/5
前へ
/150ページ
次へ
 4人はどこ行こうともなく、周辺をフラフラする・・・。 「急に散策と言われてもな」 「まぁ、まぁ仁胡ちゃん。そんなイライラしないで」 急に修業が中断された気がした仁胡は不機嫌だった。それを初那がなだめる。 壱悟は興味津々で、彼女について食いつき気味に聞きだした。 「なぁ、葉羽。さっき言ってた大輝って誰?」 「大輝くんはね、私たちと同じ歳で、護衛隊のエースなの。 すっごく強くって、でも明るくて無邪気で、一緒にいるといつも元気をもらう大切な親友なの」 「へぇ親友かぁ、いいなぁ。しかも大輝って名前がかっちょいいな! 俺たちなんて、イチゴとニコだぜ! 女みたいな名前じゃない?」 「確かに、響きだけ聞くとイチゴって珍しくてびっくりしちゃった! でも、うちの護衛隊にはね、ライチがいたよ!」 「おぉ!!!フルーツ仲間じゃん!すげぇ!!」 「雷地くんもね、年下なのにすっごく強いんだよ!しかも超人気者!」 初対面にもかからわず、同じ歳で集まったその場は意外にも盛り上がる。 「ねぇ、葉羽! ちょっと小耳に挟んだんだけど、婚約者がいるってホント?」 次は初那が自分の番だとばかりに、割って入る。 葉羽は急に顔を赤らめ、小さく頷いた。 「うそー、いいないいなぁ。どんな人?」 「いつもからかわれてばっかりなんだけどね、、、 すごく優しくて綺麗で、センスもあって笛も引けて、、、、本当に素敵な人・・・」 「うわぁ!王子様みたい!!いいなぁ・・・」 「初那には、俺がいるじゃん!!」 ふいに呟いた壱悟の言葉は耳に入らず、初那は目をキラキラ輝かせながら、乙女のように妄想の世界を想い描いていた・・・。 「あれ?ガキばっかりふけって、何してんの?」 その時、急に声をかけたのは、日に焼けた風の色黒の男性だった。 「あぁ!!広呂(ひろ)さん!!お疲れっす!!」 「あれあれ?見たことないお嬢ちゃんが一人・・・どこで口説いてきたの?」 広呂は腰を曲げ、少女に顔を近づけると、まじまじと見つめた。 「ふふーん、超かわいいでしょ?」 壱悟が自慢げな表情で紹介する。 そして仁胡は広呂の目の前に立つと、少女を見せないように隠した。 「終わり!」 「はぁ?なんだそれ?? 減るもんじゃないし・・・」 「減る!」 「はぁ?なんだそれ!  へぇ、仁胡、もしかして・・・」 広呂は何かを察したかのように片方の口角をあげニヤリと笑った。 「違うし!彼女には婚約者がいるから・・・」 少しの愛想笑いもしない仁胡の頬を、広呂は両手で引っ張る。 「おい、仁胡!綺麗な顔してるのに、もう少しかわいい顔、できないのか? 麒麟さんが言ってただろ?心が穏やかでないと、きれいな力は生れないって」 仁胡は顔を引っ張られても、ピクリとも笑わない。 「ふん、困ったやつだ。ねぇ、葉羽ちゃん!!」 仁胡の後ろで油断していた葉羽は、急に横から飛び出してきた広呂の顔に驚いた。 「え?どうして私の名前を?!」 「そりゃ、そんな娘が来るとは聞いてたからさ。俺は広呂。宜しくね!」 広呂は八重歯がきらりと光る爽やかな笑顔を見せると、軽くウインクをした。 するとその下から、もう一つ見たことがない顔が飛び出した。 「僕は九雀(くじゃく)。はじめまして」 「ひゃっ!!」 葉羽はまたもびっくりして思わず、後ろに仰け反った。 「おい、九雀!お前いつからそこにいた?」 九雀といわれる男性は、背は小さめであったが、まるで紗倉が小さくなったかのように、髪形も着ている服もそっくりだった。 「え?紗倉、、、のはずないですよね?」 「ん?紗倉??って誰?」 思わず口走った名前に、皆がキョトンとしていた。 「あ、ごめんなさい・・・ ここには私の国にいる方とそっくりな人が多くて、びっくりです! 先ほどの太賀さんもそうですが、九雀さんも私の大切な人にそっくりで・・・」 「まぁ、世界には自分に似た人が2人、3人いるっていうしね。 ねぇねぇ、じゃあ、こいつみたいにいつも不愛想で笑わない奴とかもいるの?」 「えっ、、、と・・・」 「うるさい!!!」 笑われた仁胡はまたイライラを顔に出す。 広呂はそんな彼の肩にポンと手を当てた。 「まぁ、そんなカリカリすんなって。人生朗(ほが)らかにいこうぜ! 今日はイライラが緩和する特性ミルク料理を作ってやるからさ」 そういうと、広呂と九雀は仲良さそうに反対側へ向かって歩き出した。 そしてだいぶ先の方で、分厚い本を手にした背の高い男性と合流する。 それを遠目で確認した初那が急に騒ぎ出した。 「ごめん、葉羽ちゃん!!私ね、ちょっと急用を思い出した!」 顔を真っ赤に赤らめた初那は、そのまま3人のほうへと走っていく。 「おい、初那———!!ちょっと待てよ!!」 そのあとを、壱悟が軽快に追っていく。 残された葉羽と仁胡はその場にポツンと立ち尽くした・・・。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加