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2話 課題 × 動き出した少女 × 見つけ出す刻印
『葉羽ちゃん、寂しさを乗り越えてがんばってきてね。
より一層女として磨きのかかった君に会えるのを楽しみにしています・・・
あなたのパートナー、緋色より』
散歩から戻ると、緋色は置手紙を残しすでに寺を去っていた。
「もう帰っちゃったんだ・・・。
なんか、いろいろ文面が気になるけど、、、まぁいいっか!」
本当に一人になったと思うと、少女は急に寂しさが溢れだす。
「何?もしかして婚約者からのラブレター?」
葉羽は、女性同士ということで初那と相部屋だった。
いつの間にか戻って来ていた初那が、心配そうに手紙を覗き込んだ。
「ううん、さっきまで一緒に居た緋色さんから。
初那、急用は大丈夫だった?」
「さっきはごめんね。実は私、憧れの人がいてさ・・・」
そう話しながら急に顔を赤らめ、彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「ええ?もしかしてあの背の高い人?彼とは話せたの?」
「うん、ちょっとだけ・・・。
彼はすごく真面目で寡黙な人だから、一緒にいてもあんまり会話はないんだけど、、、、一目見れるだけで数日間はうっとりできちゃうの!
おかしいでしょ、フフ」
彼女は幸せそうににっこり微笑んだ。
「そっか。初那、すごく可愛い、、、その恋、実るといいね!」
「うん。でもね、いっつも肝心な時に壱悟が邪魔するのよ!
信じられないでしょ?」
さっきの乙女チックな表情から一転し、彼女はモヤっとした顔を見せる。
「最初はね、私、、、初那は壱悟くんと仲いいんだと思っちゃった・・・」
「壱悟ね、、、あんなお茶らけてるけど、すごく有能なの。
だから、私なんかにはもったいない・・・」
葉羽は、まだたった数時間しか滞在していないが、ここにはいろんな恋模様が渦巻いているのだと感じた。
「葉羽は?今までにどんな恋愛したの?
さっきの婚約者の話、もっと聞きたい!!」
初那はキラキラした表情で少女の恋愛について質問する。
しかし恋バナなど慣れていない少女は、食い気味に近づいてくる初那にちょっと戸惑った・・・。
「え??あ、私、、、、」
トントン・・・
すると、ナイスタイミングといわんばかりに、誰かが部屋の戸を叩いた。
「葉羽様、麒麟様がお呼びです・・・」
それは太賀の声だった。葉羽は逃げるようにして慌てて部屋を飛び出した。
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