2話 課題 × 動き出した少女 × 見つけ出す刻印

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 麒麟は、彼女を初めて目撃した池の前に立っていた。 辺りはもう薄暗いのに、なぜか彼女だけが輝いて見えた。 「やっと部屋で休憩していただろうに、呼び出してごめんなさいね・・・」 「いえ、とんでもないです。麒麟様のお傍は凄く癒されます。 御用のある時もない時も、私は喜んで伺いますから!」 「では、こちらへおいで」 麒麟に促されるまま、葉羽は彼女の傍まで足を進めた。 「あなたにここでの修行のこと、まだ何も伝えてませんでしたね。 ここは浄化の寺。浄化の力を持つ者が集い、そのパワーを磨き、蓄え、時には調整したり、必要な者へと与えたりする聖なる場所です。 そしてこれは浄水の池。源泉のように湧き出てきた澄んだ新しい力が近くの里に緩やかに注いでいるのです。 だから、ここからつながる町一帯は、浄化の里とも呼ばれています・・・」 「もしかして、町の中心にあった大きな滝は、この池とつながっているのですか?」 「ご名答。あの滝から多くのエネルギーを感じ取ったのですね。 そこで、あなたへ課題を与えます」 「課題?」 「真の力の持ち主を9人、ここに集めなさい・・・」 突然課されたその内容に、葉羽は戸惑う。 「同じ力を持つ人を、ということですか?」 「そう、同じ『浄化力』を持つ者です。 ただし、特殊な力というのは、生まれたときから先天的に備わっている者と、修業を得て後天的に獲得した者の二者に分かれます。 私が言った真の持ち主とは前者のこと」 「えぇ?それはかなりの難題では・・・?」 「そう、難題です」 「いきなり9人だなんて!!どうやって集めれば・・・」 少女は頭がパニックになりそうだった。 自分の能力が発見された時も、それが珍しい力だとソレイユの皆は驚いていた。 そんな人を9人、しかも、先天的と後天的な人がどのくらいの割合で存在するかも分からない状況で、前者に限られるということは、どのくらい出会える確率が下がるのだろうかと、考えれば考えるだけで頭が真っ白になった・・・。 そしてその時初めて、紗倉が言った修業期間の重みをひしひしと感じた。 覚悟はしてきたものの、こんな課題を出され、いつ帰れるのだろうかと・・・。
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