指先

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しかし。 鈴宮君はその日、あまり体調が良くなく、保健室へ行ってしまっていたのだ。そうなると繰り上げ式に必然的に私が読むことになる。予測していなかった事態に動揺した。 私は極度の緊張状態になると、倒れないが、その代わり手の指が異常に冷たくなる。掌と指先の温度差がおかしくなる。小刻みに震え、字もろくに書けなくなる。 でも、人肌に触ると、深呼吸ができ、そして安心し、指先も徐々に暖かくなっていく。 この日もそうだった。しかし、授業を滞らせる訳にもいかない。仕方ないので、手を震わせながら壇上に向かった。
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