第3章 籐子と剛

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第3章 籐子と剛

コンビニが近づいて来る。 「おい!トンコ、どこ行くんだよ?」 後ろから男性の声が聞こえて来た。 同じクラスで、背も高く力も強い、10人しかいないクラスで一番威張っている男子生徒である。 「剛こそ何処に行くのよ?」 「あっ俺か? ジャジャーン」 と言って、ビデオカメラを見せびらかした。 「ただのビデオカメラがどうしたの?」 「まったくトンコは、頭が悪いな。 これから学校で決定的瞬間を撮りに行くんだよ」 えっ! 「絶対に止めた方がいいわよ。何かあってからでは遅いわ」 「大丈夫だろ。元気だって戻って来たんだから。 それに俺は元気みたいに飛ばされたりしないよ。 まあ見てろ!」 「ねえ、籐子からも言って、止めさせて!」 「大丈夫よ。ウチの父も学校にいるみたいだし、まだ報道陣も少し残ってるみたいよ」 駄目だ。何を言っても聞き入れない。 すると籐子が 「ねえ、私達も行かない?」 嫌だ。 絶対に嫌だ。 「昨日の事もあるし、私は行きたくないわ」 「じゃあ、ちょっと見るだけ、すみれお願い」 と手を合わせて、お願いされた。 そんな話をしてると剛君が 「じゃあな、俺は行くぞ!」 と学校の方へ歩いて行った。 籐子「すみれ、ごめん。剛を一人にしたら、まずいと思うの。あんな奴でも私、好きなんだ」 ! そういう事か 気持ちは分かるんだけど・・・ 「すみれ、勝手な事を言ってごめんね。 でも、行かなかった事を後悔したくないの。 申し訳ないけど、先に帰って、私の部屋で待っててくれる? 何とか剛を説得して戻るから」 と言って、剛君を追いかけて、学校へ走って行った。 どうしよう 籐子の気持ちはよく分かる。 私もあの時、3階に行ったのを今でも後悔している。 そして、石も持たなければ・・・ 石! 籐子に石を拾わない事と、3階へは近づかない事を伝えなければ 籐子に電話する。 ・・・出ない。 駄目だ! 行きたく無かったが、やはり危険を知らせなくては! あの経験をしたのは、私しかいないのだから 私は学校へと走った。 学校に着くと、時計は19:30を過ぎている。 昨日は19:00前に事件が起こったので、昨日の時間は過ぎている。 せめて6個の光の事や、頭上の閃光の事や石の事を父に話しておけば良かったと後悔した。 もしかしたら、少しでもヒントを得れたかも知れない。 とにかく、石と3階には、近づかない事だ。 それだけでも言わなくては・・・ グラウンドを見回すが剛も籐子もいない。 どこ? グラウンドには、各局の報道車輌が数台停まっていた。 私は校舎を見ると、3階で懐中電灯だろう光が二つ、何かを探しているかの様に、ユラユラと動いているのが見えた。 ! 籐子と剛だ! 私は近くの放送車輌に乗っているスタッフに声を掛ける。 「すいません。私の友達が学校の3階に入って行ってしまったんです。 誰か一緒に3階に行ってくれませんか?」 すると私を見たスタッフが 「あれ?君は昨日現場に居た子だよね? ちょっと取材させてくれるかな?」 もう急いでいるのに 「後で取材を受けますから、今は一緒に校舎へ入ってくれませんか? なるべく沢山の人で行きたいんです」 すると、話していた人が他局のスタッフにも声を掛けてくれたおかげで、10人が集まってくれた。 「これぐらいでいいかい? じゃあ行こう!」 「ありがとうございます。」 私を入れて11人、校舎に入って行く。 階段の下に来た時、昨日の元気とのやり取りを思い出す。 スタッフ「どうした?何かあったか?」 我に戻る 「いいえ、すいません。 行きましょう」 そして階段を登ろうとした時、上の階から悲鳴が聞こえた。 キャー! その声を聞いて、大人達が一斉に階段を走って登って行った。 私は一番最後に上の階を目指して階段を駆け上る。 1階から2階、2階から3階へ登る時、2階で物音が聞こえた。 私は無意識に3階へ登るのをやめて、2階の廊下に行くと えっ? 元気? 確かに元気の姿を見たが、真ん中の教室に入って行った。 「元気!」 私も真ん中の教室に入ると、後ろの席の窓が空いていて、元気の姿は居なくなっていた。 ? 確かに元気だった。 私は再度、3階に向かって走った。 すると3階の真ん中の教室が騒がしいので、私も真ん中の教室に入った。 すると、2mあった石の姿は消えていた。 剛君は、うつ伏せで倒れている。 その横に籐子が震えて蹲っていた。 蹲っている籐子の所に行き、 「籐子、大丈夫?」 「う・うん。」 「何があったの?」 「石がいきなり光って、小さくなっていったの。 そしていきなり激しく光って、目を背けたら石が無くなっていて、剛が倒れていたのよ」 大人達が倒れている剛君を介抱している。 「大丈夫だ。気を失っているだけだ。」 もしかして、起きたら記憶が・・・ 私の予想は外れた。 剛君は気を取り戻すと、籐子が剛君の所に駆け付ける。 「剛!」 「何だ、トンコか。その汚い面を近づけるなよ」 それを聞いて、安心したのか籐子は剛君の胸に飛び込んだ。 「もう、心配したんだから、死んじゃったらどうしようって・・」 「馬鹿、死ぬわけねえだろ」 「もうこんな事やめて!」 しばらく間が空き 「ごめんな。」 と剛君は籐子に謝った。 それにしても何だったんだろう? 私は元気の事は、誰にも言わなかった。 報道人の方には、明日取材を受ける約束をして、籐子と剛君と学校を後にした。 途中で剛君と別れ、籐子の家に着いた。
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