少女には見えていた

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少女には見えていた

少女は夢を見ていた 外の世界をみることを 城の中に軟禁されていた少女には 外と言ったら中庭ぐらいしかなかった そこにある花や木、さらに雑草の名前まで調べて、 覚えていた 少女にはそれしか自然に触れる方法がなかったのだから 。。。。 少女は孤独だった 母にも父にも愛されず 執事も自分の要求に従うだけ 友達もいない 暖かい感情など、とうの昔に忘れていた 。。。 少女はある時、違う世界に飛ばされた そこには城も壁も自分を縛る心の鎖もない 自由な森が川が空があった 少女は長年忘れていた喜びの感情に満たされていた 少女は一日中遊んだ 少女は解放されていた 少女は自由だった 。。。 少女は川のふもとに住んでいるオークの家族に拾われた オークの父は強いが照れ屋だった オークの母はきれいで優しかった オークの子供は無邪気でこの世の悪いものすべてを否定するような 笑顔を持っていた 少女は嬉しかった 暖かい謎の感情に戸惑いながらも思いっきり笑った 少女はいっぱい笑った 少女は一生分笑ったような気がした 少女はそう感じるほどに 幸せだった 。。。 少女はある時、山を登った いつも気になっていた高い高い山を 体力の限界を超えながらも少女は頂上にたどり着いた すっかり夜になっていた 山からはいろいろなものが月明かりに照らされて光っているのが見えた 大きなお城が その下の城下町が 川が 海が 山が 愛するオークの家が 少女の目に映るすべてのものが 少女にはすべてがキラキラとまるで満月の美しい月のように 見えていた。。。 少女には見えていた 少女は自由を人権を愛を友情を 少女は少女の長年ほしかったものすべてを手に入れていた 少女は幸せだった
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