大橋正広君

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大橋正広君

 愛知県北部に位置し、濃尾平野の直中にある江南市は至って平坦な土地柄。そのまた真ん中辺りにある赤童子町は住居が密集して完全に住宅街と化した今と違って住居が疎らにしか建っていなかったから慶太の住むアパート界隈には子供が遊ぶのに都合の良い空き地や野原が豊富に有ったし、遊戯施設の充実した古知野南小学校も有ったし、古知野南小学校の北の方を少し歩けば、今も昭和の名残を留めるレトロな商店街に出れて、その商店街区域内には境内の広い神社も幾つか有った。だから慶太は遊ぶ場所に事欠かなかったし、子供が遊ぶのに欠かせない玩具も古知野南小学校の正門を出て直ぐの所に子供の良き社交場でもあった駄菓子屋さんが有ったから手に入り易かったし、子供の小遣いでは買えない玩具も古知野南小学校の裏門を出て西へ少し行った所にデンマークという大きな玩具屋さんが有ったから親にねだり易く手に入り易かった。その上、今と比べて車の交通量が断然、少なく道路上でも平気で遊んだり走り回れたり出来たから慶太が生まれ育った頃の赤童子町は、子供が躍動する為の条件が充分、揃っていた。但、彼はアパートで育ち近所の幼馴染もアパートの子だった為、離愁が付き物だった。
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