奥村卓生君

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奥村卓生君

 友達の輪が順調に広がり続けていた慶太は、四年生になると、友達が蓄積され大勢になっていたから一学期がスタートした時点で自然とクラスに溶け込む事が出来た。実際、当時、彼は友達が多い事を自慢に思っていたし、赤童子町の何処に居ても友人知人に会えるから、しょっちゅう、「やあ!」って感じで挨拶出来た。もう町中、闊歩出来たし、生まれ育った土地だから町中が彼の庭みたいなものになっていた。殊に古知野南小学校では校舎や遊戯施設や校庭に生える木々や草花や校庭に置かれた岩や校庭に転がる石ころや校庭に敷き詰められた土や砂の一粒一粒までが友達みたいなものだった。それ位、赤童子町に馴染んでいたのである。全く当時の彼は社会の不正不条理を何も知らなかった子供の頃の事とは言え、幼馴染に恵まれたお陰で社会に溶け込み、時代を享受し、交友に富み、実に人間らしく生きていた。
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