契約して

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「けい…やく……?」 口にしたつもりだったが、窓に映った私は口を動かさない。私の体であるはずなのに、私の意思で動かないのだ。 『これはもうボクの体だよ?おねーさんの魂を一緒に入れてあげてるの。契約も済んでないのに主導権渡すわけないじゃん。さっきのはちょっと遊んだだけ』 『私』は『よっこいしょ』と立ち上がり、服を軽くはたいた。 「…入れてあげてるって……私は助けてって言っただけで…」 『だ〜か〜ら〜! おねーさんの体はあのままじゃ助からなかったの! だからあの時言ったでしょ!? 死か乗り移りか、って』 そうだったかなと私は唸った。そんな私を無視して『それよりも』と男の子は続ける。 『ボクがおねーさんに乗り移ってこの体を使えるようにしてあげる。代わりに手伝ってほしいんだ! ……良いよね?』 「手伝うって、何を…?」 『私』は悩むような素振りをし、口の端を吊り上げながら言葉を発した。 『探しモノを一緒に集めて欲しいんだ』 明確にされていない以上、この言葉には何か裏がある……そう分かってはいても、それが何なのか分からない。それに…。 「…もう、助けてもらってるんだから、いまさら嫌とは言えないんでしょ?」 『私』は「まぁね」と肩をすくめながら笑った。逃げ場はない……どこかでそう確信してしまった私は、力なく答えるしかなかった。 「……契約、するよ」
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