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ボクと
瞬き一つの間に、それは現れた。何故虚空に…と思うより先に、辺りが静かになっていることに気がついた。
炎は凍ったように固まり、黒い煙も遠くの雲のように動かなくなっている。私とそれだけ時間の狭間に落ちてしまったかのようだった。
『初めまして。今、ボクとキミ以外の時間を止めてるんだ。驚いたぁ?…まぁ、ボク、これ苦手だから3分しか持たないけど。だから早く決めてね! 死か乗り移りか!』
「…ど、どういうこと?」
唯一自由に動く瞳を目一杯に開いた。頭が追いつかない。
『えっとねー? このままだとキミ、死んじゃうんだよ。そこで! たまたま通りかかったこのボクが、キミを助けてあげようか?って言ってるの。分かった?』
可愛らしい男の子はその顔を傾げた。それと一緒にふわっと銀の髪が揺れる。
『…で、どうする?』
ニヤリと笑う緋色の目を、綺麗に思った。もし、手が動いたなら、私はそれに手を伸ばしていただろう。そう思ってしまうほどに綺麗だった。
「貴方は…悪魔、なの?」
『さぁ……どっちだと思う?』
男の子は『それより早く決めた方がいいよ』とワザとらしく話題をそらす。大した覚悟なんて出来ていなかったが、死にたくないという思いに負け、私は大きく息を吸った。
「助けてっ……!」
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