episode・5 それを崩す。

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山辺は施設の駐車場に停めた車の中でスマフォを取り出すと、「心臓外科医 田中麻美」と検索をかけてみた。出ないか、と思った時、検索結果が表示された。 それはとある雑誌の対談のネットニュースの記事だった。見出しには「ドラマの今後~医療ドラマを様々な観点から描く」とある。対談をしていたのは涼也の父である舘野賢二医師と田中麻美、そして進行役として彼らにインタビューしていたのは、瀬戸だった。 記事を読んだ山辺ははっとした。記事の日付は真島刑事の言っていた半年前の日付だった。瀬戸はこの時に田中と知り合い、付き合うようになったのだろう。そして記事によると賢二医師と田中麻美は同じ病院に勤めていた元同僚で、麻美の紹介欄には現在の勤務先の情報は書かれてなかった。彼女が医師を辞め、瀬戸の家のハウスキーパーをしていたのはおそらくこの頃だったのだろう。 山辺は次の手がかりを見つけねばとその病院へ向かうことにした。 二人が同僚であった私立医大付属の病院は都内の一等地にあり最先端の規模を誇っているマンモス病院だった。山辺は総合受付に行き、賢二医師と面会できないかと聞くと、診察中ですので、今は無理ですと告げられた。 「涼也さんの事でお伺いしたいことがあるとお伝えください」 二人の受付嬢は互いに顔を見合わせて、ちょっとお待ちくださいと一人が言い、内線電話をかけてくれた。 「どうぞ」 診察の合間の休憩時間になら、と賢二医師は山辺とミーティングルームで会ってくれた。
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