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会員制バーである「ムーンライト」はオフィス・ドリームズの近くに存在していた。店の前に聡子と連れ立ってきた山辺は裏口である人物が出てくるのを待っていた。
すると、一人のすんぐりむっくりとした肥満体型の男がゴミ袋を抱えて店のドアから出てきた。男は聡子と山辺を見るとぎょっとしたが、聡子は男の腕に飛びついた。男は黒いボーイの制服を着ていた。
「タカちゃん!」
「さ、聡子ちゃん!」
「会いたくてまた会いにきちゃったぁ~」
聡子はタカと呼んだ男に飛びつくとバグした。男は照れたように頭を掻くと、傍に立っている山辺をじーっと見た。
「誰?」
「ああ、兄貴」
「どうも…」
「はじめまして、妹がお世話になっております」
丁寧に挨拶したら、男はども、と小さく会釈した。
「妹がこの前伺ったかと思うのですが、9月30日の夜の事でまたお伺いしたいことがありまして」
「今、仕事中なんで、ごめんなさい」
男は急に警戒するように聡子の腕を離し、ごみ袋をそばの収集所に運んでいく。山辺はタカを追いかけて、彼を手伝おうとごみ袋を持って共に運んだ。
「あの夜、午後23時頃、貴方はここから出て行く瀬戸洋平さんを見かけたっていうのは本当ですか?」
男はゴミ袋を収集所に総て運び入れると、鍵をかけて、山辺を振り返った。
「本当です。でも、この事は聡子ちゃんにも言ったけど、警察には言わないでもらえますか?」
「それはなぜ?」
「…俺、その時、ここでさぼって煙草吸ってたから…」
男は頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。
「ここの店長すっげ―怖くて、バレたら首に」
自業自得であるはずなのに、男は頼みます、と必死に山辺に手を合わせて来た。
「…わかりました。ですが、その代わり協力してください」
男は頷いた。
「瀬戸洋平がその後、午前4時頃帰って来た時もあなたはここでさぼっていたんですか?」
「いやいや、その時はちょうど仕事が終わった時で、ここでまた煙草を」
裏口のドアの真横には喫煙所があった。男は柱の陰に隠れるように煙草を吸っていたため、ドアを開けた人間からは見えにくかった。
「瀬戸先生は常連でよく社長と連れ立って飲みに来ていましたよ。仕事の接待でも頻繁にうちを使ってました。ただ、あの日、ちょっと変わったことがあって」
「変わったこと?」
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