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その腕を誰かが捻り上げた。それは剛毛刑事だった。そばには真島刑事と聡子が立っている。いつの間にか暖炉の扉をくぐり抜けて入って来た彼らは瀬戸の背後に回り、様子を伺っていたのだ。もちろん、山辺は彼らとともにここにやって来て警備室に侵入したのだ。
「瀬戸洋平、田中麻美殺害の容疑で署までご同行を」
真島刑事がドヤ顔で言った。瀬戸は悔しそうに彼を見つめていたが、やがて視線を外してうなだれた。
× × ×
数日後、真島刑事が剛毛刑事、いや剣持刑事とともに「ロバの耳」を訪れた。
「おかげ様で田中麻美の事件は解決しました。ご協力ありがとうございました」
二人の刑事はそういって、夕飯に二つ、ナポリタンを頼んだ。
「自供によると、瀬戸は事件のあったあの日、レストランの駐車場で待ち伏せするように田中麻美に指示、出てきた春野さんを後ろから殴り、気を失わせたようです」
ナポリタンを運んで来た凛と山辺が向かいに座ると、真島刑事は事の詳細を離してくれた。
「ってことは、私、初めから拉致されるために襲われたってこと?」
凛が身を竦めた。
「まあ、そうなります。瀬戸は気を失ったあなたを田中とトランクに運び、その後、瀬戸の家に向かった。そして、あの地下室に貴方を閉じ込め、睡眠薬を飲ませ貴方を眠らせた」
「なるほど」
「その後、瀬戸は田中麻美を彼女のアパートまで送り、飲み直した。その際に彼女が常用している睡眠薬を酒に含ませ飲ませ、意識朦朧としている彼女を誘い出し、あの崖に連れて行った。その時、崖の下にある福祉施設の職員がその時の足音を部屋の中で聞いています」
山辺は頷いた。施設長の話に出ていた誰かが走っていくような足音の事だ。
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