7人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
その日、ボクはいつものようにフラフラと街中を彷徨っていた。
「うぅー……おなかすいたよぉ」
時刻は深夜二時。
皆寝静まっているはずの時間帯なのに、相も変わらずボクを呼ぶ声は聞こえない。
ボクはご飯を食べていない日数を指折り数えた。
確か、あの"りっくん"とおばあちゃんに会ったときは十日目で……あれから五日経ってるから……ということはボクは十五日間、ご飯を食べていないと言うことか。
「きろくこうしん……か」
今までの最高新記録を大幅に塗り替える記録に、ボクは目眩を起こした。
「も……げん……かい……」
ボクは遂にその場に倒れこんだ。
「ご……ごはん……」
そう呟いた時だった。
『この夢をバクさんにあげます』
そんな声が何処からか聞こえてきた。
「──ん?」
ボクはその声に反応して顔を上げた。
『この夢をバクさんにあげます』
二回目のその声と共に、ボクの体から光が溢れ出てくる。
これは……!
『この夢をバクさんにあげます』
三回目のその声に導かれるように、ボクから溢れだした光が空に向かって伸びていく。
「ご、ごはん!」
ボクはその光を追ってふわりと飛び出した。
この光の先に悪夢を見、そしてボクを呼んだ人がいる。
ボクはお腹が空いて力が出なかったことも忘れ、ピューッと声の主の元に飛んだ。
「ここは……」
光を追って行った先は、見覚えがある場所だった。
「"りっくん"がいたおうちだ」
まさかまたここに来ることになろうとは……。
でもまぁ、おばあちゃんが話していた内容を思い返せば不思議な話ではないのかもしれない。
「おじゃましまーす……」
ボクはそう言いながら屋根からそうっと中に入った。
そこは、10畳くらいの和室だった。
おもちゃなどが散らばっているところからすると、恐らく子供部屋だろう。
──ええと、ボクをよんだのは……あのこか。
その部屋の丁度真ん中に一式の布団が敷かれており、その上で子供が一人で膝を抱えて座っていた。
──"りっくん"。
余程怖い夢を見たのだろう。
りっくんの体は小刻みに震えていた。
その頭の上には黒い、モヤモヤとしたものが浮かんでいる。
悪夢の塊。
ボクの大好物だ。
最初のコメントを投稿しよう!