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「りっくん……あのね。ボク、わるい夢をたべてもおなかいたくならないよ。だから、だいじょうぶだよ」
「……本当に?」
「ほんとうだよ。むしろ、だいこうぶつさ!わるいものをたべてもおなかをこわさないなんて、すごいでしょ!」
ボクはえっへんと胸を張った。
だけど、りっくんは浮かない顔をした。
「どうしたの?」
「……ごめんね。やっぱりやなんだ」
「なんで?ボクはへいきだよ?」
「そうじゃなくて……」
りっくんは、顔を俯かせた。
「僕の夢をバクさんが食べたら、もう同じ夢を見なくなるんでしょう?」
「うん、そうだよ」
「じゃ、やっぱりだめだ」
わけが分からない。
りっくんは、怖い夢を見たはずだ。
その証拠に、黒いモヤモヤも頭の上に浮かんでいる。
それなのに、何故嫌がるのか。
その理由は、すぐにりっくんが教えてくれた。
「あのね、僕が見た夢……僕のパパとママの夢なんだ……」
「りっくんの、ぱぱとまま?」
「うん。僕のパパとママね……1年前に、事故で死んじゃったんだ」
「……」
りっくんは体を震えさせながらも、一生懸命ボクに話をしてくれた。
「その時ね、僕も一緒に車に乗っていたんだ。でも、パパとママは死んじゃって……僕だけ助かったんだ。今でも、その時の夢を見ちゃって……さっき見たのも、その夢だったんだ」
「りっくん……」
「僕、怖くて……もう忘れちゃいたくて……それで、バクさんを呼んだんだ。だけど……」
りっくんは、とても純粋で、優しくて、そして……
「僕、やっぱりあの時の事を……パパとママが僕を守ってくれたのを忘れたくない」
とても、強い子だった。
「怖いけど、怖くけど、でも、パパとママの夢を見ていたい。見なくなっちゃったら、きつかあの時の事を忘れちゃいそうだから……」
「……りっくんは、つよいね」
「ううん、強くないよ。強いのは、僕のパパとママだよ」
りっくんは、顔を上げた。
りっくんはもう泣いていなかった。
「だから、ごめんね。バクさんにこの夢はあげられないや」
「……」
「あ、でも他の夢ならあげるよ!この間見た、遊園地の夢とか!きっと美味しいよ!」
ボクはキラキラ輝く笑顔で夢の事を話すりっくんの頭をそっと撫でた。
「いらないよ」
「でも……」
「いいんだよ」
……あーあ。またごはん抜きかあ。
でも、まぁいいや。
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