パパですか?

1/10
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/176ページ

パパですか?

 それは、7月のとある猛暑の日から始まる。  その日の俺は10年振りの猛暑も何のその、早寝早起き快食快便、一日一善、その他諸々雨あられ。  気分だって至って爽快。暑さなんて全く気にならないくらいの高揚と興奮をお腹いっぱいに詰め込んだ、今にも爆走しそうなそんな状態であった。  きっと、その時の体中からの発汗は、搾りたてのレモンにも劣らない爽やかな酸味だったに違いないはず。  何せあの時の俺は、絶対に成功する確信のあった人生で最大と言えるイベントに向けて、密かにある私的な”一大プロジェクト”を計画していたのだから・・・。  当時、大学を卒業して入社2年目であるにも関わらず、俺は不運にも厄介な社内プロジェクトに抜擢されてしまい、挙句、3カ月と言う初の長期出張と言う任務を任されることになってしまっていた。  実のところは、単に直属の上司の体調不良が原因なのだけれど、しかし代打と言っても期待の新人であることには変わりはない。  俺はその期待に応えるべく昼夜を問わず職務に励み続け、そしてその結果、二週間の前倒しと言う進捗状況になっていたのである。  もちろん、その社内プロジェクトは俺一人ではないので、客観的に見ると単に足を引っ張らなかったに過ぎないとも言える。だが、生まれ持ってのお調子者の俺は、すっかり上昇気分の気流にマウント状態。挙句、公私混同までしてしまい、私的な部分まで絶好調と勘違いしていた。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!