彼女襲来

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 彼女は水分を補給させながら、汚れた髪の毛と口元、それと襟元をティッシュと濡らしたタオルで器用に拭き取っている。  その手慣れた姿が俺には母親の様に見えた。俺は遠い昔の子供の頃のことを思い出してしまい、グッと胸が詰まってしまっていた。  そんな俺に喝が飛んだ。 「救急車!」 「はい」 「よしっ!」  多分、返事が一回だったことだと思う。褒められた気がした。  不謹慎にも嬉しくなった俺は、その命令に警察犬の様に瞬時に反応。情けないことに彼女の指示があるまで気付けなかった救急車を、やっと呼ぶこととなった。  ただ、今だ冷静でない俺は、その電話で部屋の番号を言い忘れたような気がして、外で救急車を待つこととなった。  彼女はその間もずっと女の子の世話をしてくれていた。 <つづく>
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