40人が本棚に入れています
本棚に追加
/176ページ
血の繋がり以上の2
兄との二人暮らしの日々も過ぎて行く。
やがて、俺が高校3年生になる春がやって来た。丁度、両親が再婚した時の兄と同じ歳である。
あの時の兄から比べると、なんとも頼りなく仕上がってしまった俺。そんな俺でも、進路を決めなければならない時は平等にやって来てしまうのだ。
俺と兄の生活はすっかり安定していたが、それとは正反対に元々優秀でなく&勉強嫌いの俺の成績は芳しくない。
当時の兄と俺との差は歴然としていた。
持って生まれたモノがからっきしにも関わらず、目標も持たず漠然と過ごしていたのだから、それも当然の結果と言える。
しかしそうと分かってはいても、流されるままに身をどっぷりと浸たした俺は、何の行動へも移せないでい日々を送るのみ。
そんなある日のことである。
俺は、兄から祖父母の家に行くことの誘いを受けたのである。
忙しい兄と一緒に出掛けることは珍しく、何かあるのだろうか? と内心、俺は不安に思っていた。
しかし、それも祖父母の家に到着すると祖父母の雰囲気で、その理由がを直ぐに理解することが出来た。
その意味することろ、それは、他でもない差し当たっての俺の進路、高校卒業後のことであった。
その時の俺の現状では、自宅から通える国立大へ通うことはどう逆立ちしても、転がっても無理の極みであった。
恥ずかしながらその可能性については、その場の全員の脳裏を掠めることも無く暗に一致。
しかし、俺は専門学校や私立大なんて兄の負担になることは考えもしていなかった。となると、自ずと高校卒業後の進路は就職と言うことになる。
俺もそれに対して何の異論も持ち合わせてはいなかった。
実際、兄と兄の彼女を見ていた俺が大学生活に憧れていなかったと言えば嘘になるが、それが身分不相応だとは何となくは感じていた。
ところがである。それに強い気持ちも無い俺に、兄は「何処でもいいから大学には行け」と言ってくれたのである。
その言葉が、俺には正直嬉しかった。顔は綻んでいたと思う。
何の努力もしない俺の進路に対し、兄はてっきり無関心だと思っていたから尚更のことである。
でも、俺はそれに素直に従えなかった。
これ以上、兄に無理をさせる訳はいかない、そう思った。
それは、偉大な兄の言うことが絶対に正しいと思っていてもだ。だから、
「いいよ、俺、働くよ」
そう口にしていた。すると、兄は
「金か?」
端的にそう聞いて来た。
最初のコメントを投稿しよう!