11.二人で川の字を描いたなら

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---------------  寮生活を送る主人公・悟の元に、一通の手紙が届いた。 『立派な表書きだね。よほど権威ある先達なんだね』  毛筆を使った達筆な字面に、級友は恩師からの便りだと信じて疑わなかったが。実際は離れ離れになった彼女が、女の書いた字だとバレないように、男性らしい豪快な宛名を書いていたのだ。 ---------------  文通すら、男女間では公に行うことは(はばか)られる時代に、工夫を凝らして手紙を送った彼女の聡明さが際立つエピソードを私は気に入っていた。 「私も、おばあちゃんに手紙を書くね、宛名は毛筆で。『立派な表書きだね、誰からだろう?』って思ってもらえるように、練習する」 「楽しみにしておくよ」
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