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村で唯一の商店まで、全力でペダルを漕いで十五分。少し離れた路肩へ無造作に自転車を止めると、半分シャッターを下ろしていた店内へと駆け込んだ。
「あら、忘れ物?」
「豆腐を買い忘れて……まだ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど……あなたは大丈夫? 息が切れてるわよ。お水持ってこようか?」
「は、はい。いえ、大丈夫です」
何が言いたいのか、自分でもよく分からない返事をしながら木綿豆腐を一丁掴むと、店主のおばちゃんへと差し出した。
「気をつけるんだよ。山合いの道は、暗くなるのが早いからね」
代金を受け取りながら、祖母と同じように店主は声をかけてくれるが、私の心配ごとはそんなことではなく。
「大丈夫です。閉店前に、すみませんでした」
『小さな集落は、噂話が広がるのも早いからね』
無礼な行いをして祖母の面目をつぶさないように、幾日か前の戒めを思い出しながら、深々とお辞儀をして店を出た。
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