4.田舎少年・都会少女

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「えっ、何で?」  思わず、独り言が出た。  買い物をしていたほんの五分の間に、乗ってきた祖母の自転車が跡形もなく消えている。  豆腐一丁と財布を手に一瞬青ざめるも、捜し物はすぐに見つかった。慌てて止めたことが災いしたのか、自転車は側溝に倒れ落ちていたのだ。  路上へ持ち上げようとするも、古く重い鉄製の自転車は、容易に元の位置へと戻ってはくれない。振り返ると、さっきまで半分開いていた商店のシャッターも締め切られ、近くを通りかかる人影も見当たらなかった。  側溝に()まった自転車と格闘しているうちに大人たちの助言通り日は沈み、辺りは少しずつ暗くなり始める。 「どうしよう……」  涙目になりかけたその時、 「お前、何やってんの?」  背後から、聞き覚えのある声に呼びかけられた。 「何、遊んでんの?」  嫌な奴に見つかってしまった。  振り向く前に、声の主に気づく。  同い年の地元の男の子、『清斗(きよと)』だ。  ハンドルを掴む手を一瞬緩めたが、問いかけを無視したまま、再び自転車を持ち上げることに専念する。
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