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電話を終えてもなお震える彼女に熱いお茶を差し出す。
━━何と声をかけたらよいのだろう……。
体験したことのないシチュエーションにドギマギしていると、ピンポーン! と威勢よく玄関のチャイムが鳴った。
「すみません。電話をいただいたものです!」
━━彼氏さんだ!
浮き足立つ私を制止し、祖母が立ち上がる。
「私が出ましょう。事情を説明しますから」
こんな状況でも、祖母の様子は普段とまるで変わりない。玄関の鍵を開け見知らぬ男性を招き入れると、待ってましたとばかりに奥座敷から彼女が飛び出してきた。
「ユウジ!」
「サトミ!」
廊下の中央まで互いに駆けよると、彼を迎えた祖母と彼女を送りだした私の間に挟まる形で、二人はガッチリと抱き合った。
「映画みたいだねえ……」
そう呟くと、珍しく呆気にとられた表情で、祖母は二人の若者を交互に見つめていた。
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