10.十二歳は無力

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 平行線のまま母との対話を終えた祖母は、傍で聞いていた私に意見を求めた。 「灯里さんは、どうしたい?」  正直なところ、どこで暮らそうと自分自身は変わることはないだろう……ほんの少し前までは、そう思っていた。義務教育を終えるまで、祖母の元で辛抱すれば、いずれは自立できるだろうと。  けれど、夏休みの終わりを三日後に迎えた今、永遠に祖母と暮らせたら……という気持ちが沸き上がりつつあった。 ━━人生には、限りがあるからねぇ。  十二歳を迎えるお祝いにとプレゼントされて以来、いつも腕時計を身に着けるようにしていた。刻まれる時を確認するたびに、祖母と過ごす時間にも限りがあるのだと思いしる。  静かに回る秒針のリズムを感じながら、私は答えた。 「少し、考えたいです」
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