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「え、何で迷うの? 親が嫌いで、ばあちゃんちに来たんじゃないの?」
残り三回を切ったラジオ体操の帰り道。
小石を蹴りそこねた清斗は、爪先から砂埃を舞い上がらせながら振り返った。
「嫌いじゃないよ。困った大人だなぁとは思うけど……」
***
「お父様は、お元気?」
学校からの帰り道、派手な身なりの女性から親しげに声をかけられた。
「どちら様でしょうか?」
「お待ちしています、と伝えてくださいね」
私の質問には答えず、意味ありげに含み笑いをしながら、女性はヒラヒラと手を振り、立ち去った。
肩回りが妙に尖ったスーツを着た巻き毛の女性は恐らく父の愛人で、どこかの飲み屋のママだろう。
私の胸元辺りにチラチラ目線を送っていたのは、名札を確認して間違いないと踏んで声をかけたのだ。
後日、その出来事をこっそりと父に教えると、正月でも誕生日でもないのに、多めのお小遣いを私に握らせた。
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