2.同居のルールと私の仕事

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 祖母と同居するにあたって、勝手に取り決められているルールがあった。 『毎朝六時に起床すること』  これだけなのだけれど。 「六時に起床する」ということは、「布団を片付け、服を着替え、顔を洗って食卓へ着く」という一連の行いが完璧にできていることを指す。  夏休みだろうが、日曜祝日だろうが関係なく、このルールを守るよう第一日目に言い渡された。 *  ラジオ体操を終えて戻ると、約束通り「涼しいうちに」と祖母は庭の手入れをしていた。 「ただいま帰りました」 「おかえりなさい」  草むしりの手を止めることなく祖母は答える。  私は一目散に納屋の戸口へ向かうと、立てかけてある竹ぼうきを手に取り、軍手をはめて玄関と家の周辺を隈なく掃いて歩いた。 「おや、掃き掃除も慣れたようだね」 ━━慣れるもクソもあるか。  祖母の元へ預けられた一日目。  見知らぬ田舎の子たちにチラリチラリと横目で見られながら、よそよそしくラジオ体操を終えて帰ってきた初日の朝。  無言で働く祖母を目の前に何をしてよいのかわからず、ぼんやりと佇んでいると、厳しい一声と共に軍手と竹ぼうきを手渡された。 『見ているだけなら、案山子でもできる』 「強制じゃん」 「何か、言いましたか?」 「いえ、独り言です」 「若いのに、変な子だね」  年寄りなのに、祖母は恐ろしく地獄耳だ。 ━━変なのは、どっちだよ  以来、庭の掃き掃除は欠かすことのできない私の朝の仕事となった。
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