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川の字って、こういうの?
けれど二人じゃ、一本足りない。
そういえば、三人家族だというのに、父や母と並んで川の字で眠ったことがあっただろうか。
きっと、あったのだろう。
母に腕枕をされ、父の寝息を聞いた記憶が微かに蘇る。
*
「おやすみなさい」
常夜灯に明かりを落とし、就寝の挨拶を交わす。明日になれば私は十二歳になり、母の元へ帰るのだ。
目を閉じてみたものの、すぐに眠りに就くことができず、ゆっくりと寝返りを打つ。祖母も同様に眠れないのか、フゥと軽いため息をついた。
「おばあちゃん」
「何ですか?」
私の問いかけを待っていたかのように、即答する。
「私、あそこが好きなの。『虹、見えたれど』で、悟さんの元に想い人の彼女から初めて手紙が届く場面」
「あぁ……」
私の拙い説明で全てが分かったように、祖母は相槌を打つ。
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