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一時間ほどの労働の後は、二時間たっぷりと夏休みの宿題に取りかからされた。
その間も祖母は布団を干し、掃除洗濯と室内の家事に勤しんでいる。
時計の針が十時を差す頃、「やれやれ」と、ようやく祖母は居間の座椅子に腰を下ろした。
テーブルにはブラックコーヒーを入れたマグカップと、空のマグカップが並んで置いてある。
「自分のお茶は、自分で入れるんだよ」
封を開けていない紅茶のティーバッグを初めて無造作に差し出されたときは、心の中で悪態をついた。
━━ドケチババア! と。
私は、コーヒーが飲めない。
祖母が日頃は飲まない紅茶を用意し、私のために新しいマグカップを購入していてくれたことを知ったのは、随分後のことなのだけれど。
「大人になったら、美味しく思う?」
「何がですか?」
「コーヒーが……」
「大人になっても、分からない人には分からないわよ。コーヒーの美味しさは」
キリリと背筋を伸ばし、苦いコーヒーを嗜む祖母の姿が格好よく見えたのは、こんなやりとりをして以降のことだった。
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